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Barrier-freeは英語?、和製英語?

バリアフリーという日本語はよく目にしたり耳にしたりします。英語で書きますとBarrier-freeとなります。しかしこの日本語のバリアフリーと英語のBarrier-freeとは少し意味合いが違うようです。
ジャパンタイムズの記事を読みながら、それぞれの意味するところを探ってみたいと思います。

“Goal to achieve full barrier-free access at major transport terminals by 2020 Olympics adopted”

ジャパンタイムズの記事

Goal to achieve full barrier-free access at major transport terminal by 2020 Olympics adopted, (March 18, 2018)
「主要交通ターミナルの完全バリアフリー化を達成することが決定、2020五輪までに」

2018年3月18日記事

The government on Friday set a target of achieving full barrier-free access for the disabled at major train stations, bus terminals and airports ahead of the 2020 Tokyo Olympics and Paralympics
「金曜日、政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、主要鉄道駅、バスターミナル、空港における身体障害者にとっての完全なバリアフリー化の達成目標を定めた。」

The step-free access rate at such facilities with more than 3,000 daily users on average stood at 87.2 percent in the year through March 2017. By March 2021, the aim 
「1日の利用客数が3000人を超えるそれらの施設において、2017年3月末における、段差の解消の達成率は87.2%であった。2021年3月末においては100%の達成を目指す。」

The government, as part of a five-year plan, is also looking at raising the proportion of low-floor buses and other vehicles to 70 percent by March 2021 from 53.3 percent in the year ended March 2017.
「五ヵ年計画の一部として、政府は低床のバスやその他の乗り物の比率を、2017年3月末の53.3%から2021年3月末には70%への引き上げを目指している。」

According to the plan adopted Friday, the government will create an easily accessible environment and promote urban planning with the disabled in mind.
「金曜日に決まった計画では、政府は障害者に配慮した、より活動しやすい環境を創造し、都市計画を推進していくこととなる。」

In addition, the plan will bolster security measures at care facilities for people with disabilities in the wake of the 2016 stabbing rampage in Sagamihara, Kanagawa Prefecture, in which a former worker there killed 19 residents, believing “the disabled should be eradicated.”
「加えて、計画は元職員によって19人が殺害された2016年の神奈川県相模原市での凄惨非道な事件を受けて、障害者介護施設での安全対策を強化する予定だ。その元職員は障害者はいなくなるべきだという考えで、19人もの入居者を殺害したのだった。」

ポイントになる語句

記事の中にいくつかのポイントになる語句があります。
full barrier-free access at major transport terminal
「主要交通ターミナルにおける完全なバリアフリー化。」
バリアフリーとすべきところについて、主要交通ターミナルというふうに場所が限定されています。

major train stations, bus terminals and airports
限定されている場所を、例示しています。
「主要鉄道駅、バスターミナルそして空港です。」

step-free access
「段差の解消」という意味です。
車椅子での通行を可能とするということになります。

low-floor buses and other vehicles
「低床バスなどの乗り物。」
これも具体的な場所の限定のひとつです。

an easily accessible environment
「より活動しやすい環境、あるいはアクセスしやすい環境」という意味です。

日本語のバリアフリーは英語では easy acccess

こう見てきますと、英語の barrier-free は具体的には段差を解消し車椅子での通行が可能となること、そして車椅子での交通機関の利用ができるようになるということを意味していることが分かります。

記事中では、さらに幅広い、障害のある方にとっての環境改善という意味では、create an easily accessible environment という表現が使われています。
このacccess、さらにeasy acccess、そしてaccessible、accessibilityという語句が、物理的な段差の解消のみならず、視聴覚障害のある方への配慮、障害のある方々の教育や就労のシステム上の差別の解消、また諸外国からの訪問者の増加、つまり国際化にともなう言語上の不自由の解消などの幅広い障害の解消を目指すという意味でなのです。

日本語におきましては、政府も各地方自治体も物理的な段差の解消から制度的な差別の解消そして国際化への対応までを含めて、配慮を行なっていくことに関して、大きく包括的に「バリアフリー」という用語を使用していますので、いろんな意味を含め日本語でバリアフリーということは間違いではありません。

しかし英語の barrier-freeとは完全にイコールではないということは理解しておいたほうがいいと思います。というのも、日本のバリアフリーは英語の barrier-freeよりも、幅広い意味を持っているということができるからです。つまり、英語の barrier-freeは段差解消など、せまい意味でつかわれるのに対して、日本語のバリアフリーは、英語で言うaccessibility(あるいはEasy access)を含む広い意味で使われているからです。

例えば、ウィキペディアの「アクセシビリティ」の項目を見ますと、次のように書かれています。
・アクセシビリティ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/20 08:45 UTC 版)
アクセシビリティ(英: accessibility)とは、近づきやすさやアクセスのしやすさのことであり、利用しやすさ、交通の便などの意味を含む。国立国語研究所「外来語」委員会は日本語への言い換えとして「利用しやすさ」を提案している。現代では、広い種類の利用者が製品や建物、サービスなどを支障なく利用できる度合いを指していることが多い。英語本来のアクセシビリティは、ノーマライゼーションの推進の理念から社会のすべてに適用される意味合いがある。日本でのバリアフリーがこれにあたる。

また、次のように解説しているWebサイトもあります。
・濱田ウェブ・アクセシビリティー研究所HPの用語解説
「世界的には、設備やシステムが、広く障害者や高齢者などに対応可能であることを英語では「アクセシビリティ」(accessibility)が使われる。それに対して、「バリアフリー」(barrier free)は建物の段差を取り除くことなどのみを示す認知度の低い用語である。」
http://www.web-accessibility.jp/accessibility/hama-you/hama-you-03.html

他にも、Easy accessの意味を勉強できるとてもよいYouTubeサイトがあります。
一度お聞きください。簡単な英語ニュースです。
英語ではバリアフリーとはいわないということがよくわかりますよ。
・YouTubeの動画
https://www.youtube.com/watch?v=n4A8JrKR9yk

このように、日本語のバリアフリーはaccessibility(あるいはEasy access)を意味するため、英語で表す際には、acccessを使った語句で表すあるいは訳すのがふさわしいといえます。従って、日本語の「バリアフリーな環境」を英語に直すと、”an easily accessible environment”となります。
英語の barrier-freeと日本語のバリアフリー。ぜひ違いを知っておいてくださいね。

ユニバーサルデザインとノーマライゼーション

似たような意味合いを持つ言葉にユニバーサルデザインというものがあります。
英語では universal design となります。
障害のある方はもちろんですが、範囲を限定せず、老若男女、国籍などを問わずにだれでもが理解でき使用できるモノコトのことをいいます。

ユニバーサルデザインであるには7つの原則に該当していることが必要です。
1.公平な利用 equitable use
2.利用における柔軟性 flexibility in use
3.単純で直感的な利用 simple and intuitive
4.認知できる情報 perceptible information
5.失敗に対する寛大さ tolerance for error
6.少ない身体的な努力 low physical effort
7.接近や利用のためのサイズと空間 size and space for approach and use

具体的には、自動ドア、センサー付きの蛇口、料金投入口の大きい自動販売機、シャンプー容器についている突起などが該当します。

さらにノーマライゼーションという言葉も覚えておくといいと思います。
英語では normalization です。
障害のある方もない方もお互いが区別されることなく、社会生活を同様におくることができるのが望ましい姿であり、そうなるために支援がなされていくことを意味しています。

まとめ

日本語のバリアフリーと英語のbarrier freeの意味することの違いがお分かりいただけたと思います。日本語のバリアフリーを意味することは、英語では easy access を使った表現がされますから、そういう表現に触れたときに、覚えておくと正しく読み取ることができると思います。

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