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関係代名詞・副詞の訳し方~ホーキング博士死去の記事から(前編)

that、which、who、whose、where、whenなどの関係代名詞、関係副詞は日本語にはない品詞ですから、どうしても理解しづらいものだと思います。
日本語に訳すときも、後ろに書かれていることを先に訳して前に書かれている語句を修飾するあるいは説明するというちょっと厄介な作業が必要になります。
さらに、その関係詞の前にカンマがあったりすると訳し方も違ってきます。

著名な英国の科学者、ホーキング博士の死去を伝える、ジャパンタイムズの記事を読みながら、関係代名詞、関係副詞の訳し方を勉強してみたいと思います。
https://www.japantimes.co.jp/news/2018/03/14/world/science-health-world/physicist-stephen-hawking-dies-76/#.Wy1pN9L7TIV

ホーキング博士の死を伝えるジャパンタイムズの記事

Physicist Stephen Hawking dies at 76, on March 14, 2018
物理学者スティーブン・ホーキング博士が76歳で死去 2018年3月14日記事
Work centered on uniting relativity and quantum theory; disabled author of 'A Brief History of Time' became a cultural icon
相対性理論と量子論の統合を研究し、身体にハンディキャップを負いながらも、著書『ホーキング、宇宙を語る』は世界中で読まれた
Stephen Hawking, Britain's most famous scientist, who dedicated his life to unlocking the secrets of the universe, has died at age 76.
英国で最も著名な科学者、スティーブン・ホーキング博士、宇宙の謎を解明することに生涯をささげた、がおしくも76歳で亡くなった。

早速、関係代名詞、whoがでてきました。
そしてカンマがひとつのセンテンスの中に3つもあります。
whoの前にもありますから、関係代名詞の前にカンマが入る、継続用法です。

書いてあることは単純で、ホーキング博士は最も著名な科学者で、宇宙の秘密の解明を研究し、76歳で死去したということです。しかしせっかくですからどう考えて訳すべきか調べてみましょう。

Stephen Hawkingがこのセンテンスの主語です。動詞は has diedです。
最初のカンマは主語と同格としてBritain’s most famous scientist「英国の最も著名な科学者」という語句を挿入しているということです。
二つ目のカンマは関係代名詞の継続用法を示しています。継続用法となりますと、先行詞を限定しておらず、つまり直前の名詞を修飾するとは限らず、この場合は最初のカンマの前にある Stephen Hawkingについて説明しているということになります。
三つ目のカンマは、関係代名詞の継続用法でよく使用される形で、あえていえば強調という意味を持ち、訳すとすれば、「しかし残念なことに」としてこの死去に対する強い弔意を示しています。

His children, Lucy, Robert and Tim, said in a statement carried by Britain's Press Association news agency on Wednesday: “We are deeply saddened that our beloved father passed away today. “He was a great scientist and an extraordinary man whose work and legacy will live on for many years.”
水曜日、彼の子どもたち、ルーシー、ロバート、ティムは声明を発表した。最愛の父の死を深く悲しんでいます。父は偉大な科学者で卓越した人間でした。彼の業績とその遺産は長く讃えられるでしょう。

所有格関係代名詞whoseが使用されています。
ここは単純に直前のmanが所有するという意味となります。
直訳しますと、「長く讃えられる業績と遺産を持つ卓越した人間」となります。

Born on Jan. 8, 1942 - 300 years to the day after the death of the father of modern science, Galileo Galilei - he believed science was his destiny.
1942年1月8日生まれでした。現代科学の父、ガリレオ・ガリレイの死から300年後の同じ日でありました。自分には科学が運命付けられていると信じていたのでした。

関係代名詞の制限用法と継続用法

But fate also dealt Hawking a cruel hand. Crippled by amyotrophic lateral sclerosis (ALS), which attacks the nerves controlling voluntary movement, he spent most of his life in a wheelchair.
しかし運命は彼にとって過酷なものでした。筋萎縮性側索硬化症(ALS)による機能障害により、それは運動機能をつかさどる神経系を麻痺させるもので、彼は生涯のほとんどを車椅子の生活を送ることをしいられたのでした。

ここも関係代名詞の継続用法です。カンマのあとのwhichによる関係節がALSを説明しています。このセンテンスを利用して、関係代名詞の制限用法と継続用法の違いを見てみたいと思います。
関係代名詞の前にカンマがなければ制限用法、カンマがあれば継続用法です。
継続用法の場合は単なる先行詞の修飾というよりも、説明という意味合いが強いと考えたほうがいいでしょう。

仮にこのセンテンスで、whichの前にカンマをつけず、制限用法としていたとすると、訳文は「運動機能をつかさどる神経系を麻痺させる筋萎縮性側索硬化症(ALS)による機能障害により・・・」となります。これは「機能障害は他の理由によっても起こっているかもしれないが、運動機能をつかさどる神経系を麻痺させるというALSによる機能障害もおきている」という意味です。
原文どおりの、継続用法ですと、「彼はALSによる機能障害があり、そのALSによる機能障害とは運動機能をつかさどる神経系を麻痺させるものだ」という意味です。

少し複雑な例文となっていますので分かりづらいかもしれません。
単純な例をあげて見てみましょう。

A) 関係代名詞 制限用法
He has a dog that is white.
彼は白い1匹の犬を飼っている。(他にも犬は飼っていて、白い犬は1匹である)

B) 関係代名詞 継続用法
He has a dog, which is white.
彼は1匹の犬を飼っていて、その犬は白い。(彼は犬は1匹しか飼っていない)

つまりA)制限用法では、「(不確定な情報はあるが)彼は白い犬を1匹飼っている」ということを意味しています。B)継続用法では、その犬は白いという修飾あるいは説明よりも、その前の「彼は1匹の犬を飼っている」ということを断定するという意味合いが強いということなのです。カンマ以下は追加情報ということになります。さらにまた、継続用法はthatを使わないことも覚えておきましょう。

Hawking defied predictions that he would only live for a few years, overcoming the debilitating effects of ALS on his mobility. A severe attack of pneumonia in 1985 left him breathing through a tube, forcing him to communicate through an electronic voice synthesizer that gave him his distinctive robotic monotone.
ホーキングは余命数年という宣告をものともしなかった。
ALSにより体を動かせなくなるということを克服したのでした。
1985年、肺炎により、特徴的で無機質で単調な音声しか発せない電子式音声合成装置を通しての会話を強いられただけではなく、呼吸にはチューブを必要とするようになりましたが。

最後の行に、代表的な関係代名詞thatが使われています。先行詞はan electronic voice synthesizer です。thatがその先行詞とイコールな関係です。
最初の行のthatは関係代名詞ではありません。predictionsの内容を説明する節をしめしているthatです。補語節を導く接続詞です。

“I am quite often asked: how do you feel about having ALS?” he once wrote. “The answer is, not a lot. I try to lead as normal a life as possible, and not think about my condition, or regret the things it prevents me from doing, which are not that many.”
「よく聞かれるのは、ALSであるとはとはどういう具合ですか?」ということです。彼は一度記しています。
「答えは、たいしたことないよ、です。できるだけ普通に生活しようとしています。あまり病気については考えないようにして。あるいはできないことがあってもがっかりしないように。そういうことはそんなにないですから。」

ここもwhichによる関係代名詞の継続用法です。whichの先行詞となるのは、the thingsです。
このセンテンスはおそらく会話文から引用されているのではないかと思います。
文法的にはこのthe thingsのあとのitは少しおかしいですね。

また not that manyのthatも会話の中で、「そんな」といった感じであまり意味なく使われる語句です。文法的には指示副詞となります。

まとめ

記事の前半におきましては、関係代名詞の制限用法と継続用法の違いについて勉強することができました。表記上はカンマがあるかないかの違いなのですが、実は意味あいが少し変わってくるということをお分かりいただければと思います。
次回は記事の後半をご紹介します。後半でもまた関係代名詞の使い方、特に目的格関係代名詞について、引き続き調べてみたいと思います。

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