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『ダブリン市民』から学ぶ、いろんな英単語、表現方法~4

ジェームズ・ジョイス『ダブリン市民』、The sisters(姉妹)の最終回です。
引き続き、詳しく読んでいきましょう。

The Freeman’s General

Nannie had leaned her head against the sofa-pillow and seemed about to fall asleep.
ナニーはソファの枕に頭を委ねて眠りに落ちたかのようだった。

“There's poor Nannie,” said Eliza, looking at her, “she's wore out. All the work we had, she and me, getting in the woman to wash him and then laying him out and then the coffin and then arranging about the Mass in the chapel. Only for Father O'Rourke I don't know what we'd have done at all. It was him brought us all them flowers and them two candlesticks out of the chapel and wrote out the notice for the Freeman's General and took charge of all the papers for the cemetery and poor James's insurance.”
「かわいそうなナニー、疲れているのね。」それを見てエリーザがいった。
「 彼女と私でみんなやりましたの。お清めの女性を呼んで、彼を横たわらせて、棺を手配して、そして礼拝堂でのミサの準備も。 
何をするのか、オルーク神父のおかげでわかりました。
礼拝堂からあの花全部と燭台2本を持ってきて、フリーマンズジャーナルに通知文を書き送って、そして共同墓地と保険の書類を手配してくださった。」

– the Freeman’s General:当時のダブリンの新聞The Freeman’s Journalのことと言い間違えていることを表現していると思われます。

“Wasn't that good of him?” said my aunt.
「なんていい方なの。」叔母がいった。

Eliza closed her eyes and shook her head slowly.
エリーザは目を閉じてゆっくりと頭を振った。

“Ah, there's no friends like the old friends,” she said, “when all is said and done, no friends that a body can trust.”
「古くからの友人に勝るものはないわ。信頼できる人は他にはいない。」

“Indeed, that's true,” said my aunt. “And I'm sure now that he's gone to his eternal reward he won't forget you and all your kindness to him.”
「そのとおりですわ。今、彼もあなた方のしてくれたことをきっと忘れないでしょう。」叔母がいった。

“Ah, poor James!” said Eliza. “He was no great trouble to us. You wouldn't hear him in the house any more than now. Still, I know he's gone and all to that....”
「かわいそうなジェームズ!」エリーザはいった。
「彼は面倒はなかったの。生きているときでも今と同じように静かで。でももういないのね。」

“It's when it's all over that you'll miss him,” said my aunt.
「落ち着いたときには淋しくなってしまうわね。」叔母がいった。

“I know that,” said Eliza. “I won't be bringing him in his cup of beef-tea any more, nor you, ma'am, sending him his snuff. Ah, poor James!”
「そうなんです。私はもうビーフティーを運んであげることもないし、あなたも嗅ぎたばこをあげることもないのですね。かわいそうなジェームズ!」エリーザがいった。

The rheumatic wheels

She stopped, as if she were communing with the past and then said shrewdly:
彼女は過去と通じているかのように動きを止めそして言い放った、

– commune with:親しく交わる、親しく話し合う。
– shrewdly:抜け目なく、鋭く。

“Mind you, I noticed there was something queer coming over him latterly. Whenever I'd bring in his soup to him there I'd find him with his breviary fallen to the floor, lying back in the chair and his mouth open.”
「近頃、彼はちょっとおかしくはなっていたのですよ。スープを運んだときはいつも、彼は聖務日課書を床に落として、椅子にだらしなく座って口を開けていたのです。」

– queer:妙な、怪しい、気が狂っている。
– latterly:近頃、終わり頃。
– breviary:聖務日課書。

She laid a finger against her nose and frowned: then she continued:
彼女は指を鼻にあて、顔をしかめて、そして続けていった、

– frown:顔をしかめる。

“But still and all he kept on saying that before the summer was over he'd go out for a drive one fine day just to see the old house again where we were all born down in Irishtown and take me and Nannie with him. If we could only get one of them new-fangled carriages that makes no noise that Father O'Rourke told him about, them with the rheumatic wheels, for the day cheap - he said, at Johnny Rush's over the way there and drive out the three of us together of a Sunday evening. He had his mind set on that.... Poor James!”
「でもいつもいっていたの。夏が終わる前に、天気のいい日に、ナニーと私を連れて、アイリッシュタウンの私たちみんなが生まれた古い家をもう一度見に馬車ででかけるんだって。
オルーク神父がいっていたのですが、騒音のしない空気の入った車輪の最新式の馬車があるそうで、それが手に入ったら、道の向こうのジョニー・ラッシュのところでね、そうしたら私たち三人でいっしょに日曜の夕方に出かけようって。そう心に決めていたの。・・・かわいそうなジェイムズ!」

– newfangled:最新式の。
– carriage:四輪馬車。
– the rheumatic wheels:「リューマチ性の車輪」となりますが、pneumatic wheels 空気入りタイヤの言い間違いを表現していると思われます。

“The Lord have mercy on his soul!” said my aunt.
「彼の魂に神のお慈悲を!」叔母がいった。

– The Lord:神、主。
– mercy:慈悲、恵。

Eliza took out her handkerchief and wiped her eyes with it. 
エリーザはハンカチを取り出して目をふいた。

Then she put it back again in her pocket and gazed into the empty grate for some time without speaking.
そうしてふたたびハンカチをポケットにしまって、空の暖炉を見つめて沈黙した。

– gaze into:じっと見つめる。
– grate:暖炉。

“He was too scrupulous always,” she said. “The duties of the priesthood was too much for him. And then his life was, you might say, crossed.”
「彼はいつもまじめすぎたのです。聖職者の義務は彼には重すぎたのです。おわかりでしょう、彼の人生はかなわなかったのです。」

– scrupulous:厳正な、実直な、几帳面な。
– crossed:渡る、交差する、といった意味の動詞crossの過去分詞ですが、ここでは受難、苦難を受けたものだったといった意味となっています。

“Yes,” said my aunt. “He was a disappointed man. You could see that.”
「はい、彼は失意の人でした。わかっています。」叔母がいった。

– a disappointed man:失意の人。

A silence took possession of the little room and, under cover of it, I approached the table and tasted my sherry and then returned quietly to my chair in the corner. 
小さな部屋を沈黙が支配していた、そのすきに、僕はテーブルのシェリー酒を口にしてまた音を立てずに隅の椅子に戻った。

– このセンテンス:主人公の少年は、二人婦人の話を聞いてはいましたが、よく意味がわからず、飽きてきたのです。そこですこし話が途切れたすきに、シェリー酒を飲んでみたのですね。

Eliza seemed to have fallen into a deep revery. 
エリーザは深く考え込んでしまったようだった。

– revery:ぼんやりした状態。

We waited respectfully for her to break the silence: and after a long pause she said slowly:
彼女の沈黙をそっとしておいた。長い時間がたったあとで、彼女はゆっくりと話し出した。

– respectfully:うやうやしく、謹んで、丁寧に。

“It was that chalice he broke.... That was the beginning of it. Of course, they say it was all right, that it contained nothing, I mean. But still.... They say it was the boy's fault. But poor James was so nervous, God be merciful to him!”
「あの聖杯をこわしてしまったこと・・・・それがきっかけなのでした。
もちろん、何も入っていなかったので大丈夫だといわれたのですが。
しかし、そうでしたけれど、その少年の過ちだとされて。
かわいそうなジェームズはとても気に病んで、神のお慈悲を!」

– chalice:聖杯。

“And was that it?” said my aunt. “I heard something....”
「そうでしたの?なんとなくは聞いていましたが。」叔母がいった。

Eliza nodded.
エリーザは頷いた。

“That affected his mind,” she said. “After that he began to mope by himself, talking to no one and wandering about by himself. So one night he was wanted for to go on a call and they couldn't find him anywhere. They looked high up and low down; and still they couldn't see a sight of him anywhere. So then the clerk suggested to try the chapel. So then they got the keys and opened the chapel and the clerk and Father O'Rourke and another priest that was there brought in a light for to look for him.... And what do you think but there he was, sitting up by himself in the dark in his confession-box, wide-awake and laughing-like softly to himself?”
「すごく気にしていたのです。そのあとからです、ふさぎこむようになり、誰とも話をしなくなり、ひとりでさ迷い歩いたりして。ある晩、お出ましに呼ばれたのにどこにもいなかったのだそうです。みんなで探し回って。それでも見つからなくて。書記がためしに礼拝所を見てようと考えて、礼拝所の鍵を開けて、その書記とオルーク神父ともう一人の方で灯をもって彼を探してみましたら、なんと彼がそこにいたのでした。告解室に、暗い中で、きちんと座って、しっかり目を開けて一人笑いするかのように。」彼女はいった。

– affect:影響する、作用する。
– mope:塞ぎこむ、陰気になる。
– wandering:あてもなく歩き廻る、さまよう。

She stopped suddenly as if to listen. 
彼女は何かを聞くかのように突然口を閉じた。

I too listened; but there was no sound in the house: and I knew that the old priest was lying still in his coffin as we had seen him, solemn and truculent in death, an idle chalice on his breast.
僕も聞き耳をたてた。しかし何も家の中に物音はしていなかった。老いた神父はさっきと同じように、聖杯を胸にして、死の世界の中で厳粛に獰猛に棺の中に横たわっているのは分かっていた。

Eliza resumed:
エリーザは再び話し出した。

“Wide-awake and laughing-like to himself.... So then, of course, when they saw that, that made them think that there was something gone wrong with him....”
「しっかりと目を開けて、一人笑いしているかのように・・・・・そうして、もちろん、それを見たときには、彼が尋常ではないということはみんな分かったのでした。」

まとめ

作品を通じて、普段はあまり使わない単語や表現方法を学んでみました。
最後のエリーザによって語られている内容が、作品としては中心となっているようです。聖杯を割ってしまったことがすべてのきっかけと語られています。

曖昧にしか書かれていないので、理解するのは難しいところです。

聖杯を割ってしまったとありますが、もしこのとき聖餐用のワインが入っていたとすると、キリストへの敬意がないとされひどく非難されるのでした。このときは何も入っていなかったと書かれています。さらに実際に割ったのは “the boy”、「その少年」とされています。しかしその少年についてはなにも書かれていないので、その辺の経緯を推量するのはすこし難しいですね。
普通に考えれば、ミサの時の助手となる少年のことでしょうが、はっきりとは書かれていません。しかしこの出来事のあとで、若いときはローマのカトリック大学で学んだ優秀な聖職者であったこの神父が、心を病み、場末の地で生涯を終えることになったのでした。

この作品については解説書が多く書かれていますので、興味のある方は調べてみてください。

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