「TEAP」試験の鬼門、スピーキングを攻略せよ(後編)

レベルチェックテスト
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さあ、後編では「TEAP」の各問題形式についてみてまいりましょう。

Part 1「日常的な質疑応答」

 まずこの導入パートでは、1分30秒程度の簡単な日常会話のテストがおこなわれます。先述のとおりPart1からPart 4に進むにつれ問題レベルが上がっていくのですが、このPart 1ならばだいたいの受験者がリラックスして臨めるでしょう。
 問題数は全部で3問。中学時代に好きだった科目は何か?/ 休日はいつも何をして過ごすか? / 将来は外国に住んでみたいか? などが訊かれます。Yes, No で答えられるようなタイプの質問もあれば、5W1Hで訊かれて具体的に自分なりの答えを示さなくてはいけないものまでさまざまです。もしYes, No で簡潔に答えられる質問だったとしても、Yes, No いずれかで答えたあとで面接官からすかさず「Please tell me more about it.」なんて訊かれますので、結局は自分で詳細を述べなくてはいけません。Yes か Noだけ言って逃げ切れるようにはなっていません。この点が TEAPらしく高校生レベルに照準を合わせてきていると思います。

【傾向と対策】
ここでは発話量や積極性がみられるだけでなく、もちろん文法ミスがないかという点でもシビアにチェックされます。落ち着いて”書け”ばミスしない動詞の時制も、いざ”話す”となると過去形にせず現在形のまま使っていたり…なんてことがよくあります。必ずしもネイティブ相手でなくてよいので、事前に受験者どうし、友人どうしで、クイックレスポンスの練習をしておくとよいでしょう。

Part 2「インタビュー」

 このパートでは、面接官がある職業に扮して受験者からインタビューを受けるという場面設定になります。受験者はインタビューアー(=インタビューをする人)になりきって、カードに4~5つ書かれている「これらを尋ねなさい」というミッションにしたがって目の前の面接官に質問をしていきます。
 このパートの始まりで、面接官から「私は○○(職業名)です」と設定を言い渡されます。もちろん英語で伝えられます。弁護士だったり政治家だったり、面接官の扮する職業は実にさまざまです。「このカードに書かれている事項を私に尋ねてみてください」と、カードを読む時間を30秒与えられたあとインタビューを開始します。インタビューはおおむね1分半~2分程度で終えるとよいでしょう。
 ここは、はっきり言うとゴリゴリの文法確認パートですね。尋ねることは決まっていますから、「これをどんな質問文に直していけばいいんだろう」という頭の中の組み立て力がみられるわけです。

【傾向と対策】
 まずは職業名を表す英単語をよく網羅しておきましょう。簡単なものだと farmer や high school teacher などがありますが、ほかにたとえば anthropologist「人類学者」や prosecutor「検察」など幅広い職業名の知識がここでは必要です。むしろここはスピーキング重視ではなく、日々蓄えた知識量で高得点が狙えるパートです。実際には簡単な名前の職種もややこしい名前のものも、どちらも出ます。
 同時に文法の正確性が大切なパートでもあります。面接官から渡されるカードには、「これらをインタビューで尋ねなさい」という箇条書きがあるのですが、自分でそれをSVOと組み立てて疑問文にしなくてはいけません。もしカードに「the year of her career」と書かれていれば、自分で「How long have you ~?」や「How many years have you ~?」などと即座に変換できねばなりません。これはTEAP対策問題集などで何パターンかこなしておくことで機械的に転換できるようになります。

Part 3「即興スピーチ」

 いよいよPart 3 からがTEAPの真骨頂です。ここで一気に英検準1級っぽくなります。面接官から渡されるカードに載っているテーマについて、自分の意見を1分で述べる(=スピーチする)パートになります。カードを渡されて30秒の準備時間があり、その後「Please begin speaking.」と指示があります。話し始めて1分を超えたら容赦なく「Sorry, time is up.」と、話している途中でも面接官に遮られてしまいます。
 示されるテーマというのは、「Do you think ~?」形式で訊かれることがほとんどなので、基本的には受験者は Yes か No のどちらかの立場に立って論を展開していくようにほとんどのTEAP対策書が解説しています。たとえば、「動物実験はアリですか?」という質問に対して、Yes の立場であれば「科学の飛躍のために多少の犠牲はやむを得ない」ですとか、Noの立場であれば「ただでさえ十分な科学の恩恵があるのに、これ以上の便利さや恩恵のために貴重な命を危険にさらしてはならない」など、自分の立場をサポートする文を述べます。

【傾向と対策】
 ここでテーマになるのは、いわゆる”世の中”的なことです。個人的なことはまず出ません。意外とふだんの理科・社会の教科書で触れられていることが主です。高校生にしてみても飛躍して難しい話題ではなく、すでにだれかが何かしらアレコレ言っているような有名な命題が出されますので、みずからの意見をゼロベースで固めて準備する必要はありません。だれかが言っていることを、「へえこんな意見、こんな理由があるんだ」と自分の引き出しにしまい込むのを繰り返すのが効率的です。英語に直すのはその次のステップです。
 TEAP対策書には、よく「理由は2つ述べることが望ましい」と書かれていますが、実際に1分間のなかで2つ理由を収めるには相当高いレベルが要求されます。ほとんどの受験者が1つ理由を言い終わるか言い終わらないかで制限時間に達してしまう実情からしても、まずは1つちゃんと理由を言えれば合格点でしょう。

Part 4「社会性のある話題についての質疑応答」

 Part 4では、4分ほどのあいだに最大で4つのQ&Aがあります。ここでは面接官からカードを渡されることはなく、これはつまり「視認」できるものが一切ないということです。面接官の発する質問文を耳で完璧に聞き取ることがファーストステップです。聞き返しは最大2回までOKで、質問文中に出てきた単語の意味や全体の意味を確認することは許されていません。(どうしても聞き取れなければ、次の質問に移ります。)
 さあ、ここが意外に大変なんです。質問文に使われる単語が、高校生にとっては難儀なんです。1つには、「見てわかるが、聞いてわからない」単語が使われるからです。 acceptable「許容の」 や prioritize「優先させる」 などがそうです。さらにもう1つは、慣れない単語の運用があります。私たちがよく知っている better や value が動詞で使われているなど、英語上級者でも一瞬「あれっ?」と思うような質問文なのです。
 問われている内容は、Part 3 とほとんど同じです。高校生であれば、ふだんから社会事象に興味を持っていることで、なんとか英語でしどろもどろしながらも回答が可能です。たとえば「学校は勉強中心よりも芸術系の才能を伸ばすほうに重点を置いたほうがよいですか?」などといった質問です。しかし、質問文の正しい理解ができるかどうかという点がすでに第一ハードルであり、この Part4 は受験者にとって鬼門中の鬼門と言えるでしょう。

【傾向と対策】
 まずは聞き返し表現を完全にマスターしておくことです。I beg your pardon. / Pardon. ばかりでなく、I’m sorry? / Excuse me? 、それから Could you repeat the question? などいくつかのバリエーションを用意しておけば、全質問文を聞き返ししたとしてもワンパターン感を回避できます。
 そして、自分の Yes, No の主張をサポートする「理由」2つを述べることがTEAP対策書で述べられているのはこの Part 4 でも同じですが、まず平均的な受験者ではこれは無理です。「理由」を2つとも見事に言い切ることができるのは、せいぜい上位3%程度でしょう。述べる「理由」はまず1つだけに絞り、時間をたっぷり使って、慎重に言葉を選びながら言いつなぐのが得策です。(ペラペラである必要はなく、つないでいく感覚で十分です。)ふだんの情報収集の蓄積から、「世の中ではこんなふうに言っている人がいる」ことを思い出し、なんとかそれを英語に転換していくことに集中するのがよいでしょう。
 余裕のある人は、学生向けの英字新聞を購読するのもよいでしょう。載っている英文そのままを覚えることができるからです。しかし、個人的に筆者は強くはおすすめしません。なぜなら、書いた英文は発話する英文と構造の複雑さが異なるからです。分詞構文だったり関係詞だったり、高校生が口に出すことを想定していないハイレベルの英文が新聞には載っています。完璧に暗記でもしない限り、うかつに英字新聞に手を出すのはTEAPのスピーキングテスト対策としては疑問です。ただ、速読力を上げたりボキャブラリーを増やすのには、もちろん大きな効果が見込めるでしょう。

以上、TEAPのスピーキングテストについて簡単に述べさせていただきました。実際は英語そのものの運用力と同じくらい、日本語で生活を送る中でふだんからできる”準備”もあることをご理解いただけたかと思います。きちんと中身のあることを話す、これが国際人には肝要です。その第一歩としてのTEAPスピーキングテストに、高校生ならばぜひチャレンジしていただけたらと思います。

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