スピーキングテスト「TSST」を受けてみました

レベルチェックテスト
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みなさん、これまで英語のテストはどんなものを受けてこられたでしょうか? 英検、TOEIC、TOEFLにはじまり、G-TEC(ジーテック)やIELTS(アイエルツ)など世の中にはさまざまな英語のテストがありますね。ここでご紹介したいのが、アルク社の運営主催するスピーキングテストで「TSST」というものです。アルクと聞くと、かの有名な「ヒアリングマラソン」の教材会社ですね。本稿はその受験レポートとしてお読みください。

「TSST」は何て読むの?

そのままアルファベット読みで「ティー・エス・エス・ティー」です。これは正式テスト名称の Telephone Standard Speaking Test の頭文字をとっています。その名のとおり、電話で受けるテストです。英語教育現場においてバランスのとれた「4技能」を養成すべく、これまでリーディングとリスニングにかかりすぎていた比重を適正化するため、昨今はスピーキングテストやライティングテストの開発が顕著です。この「TSST」も例に漏れず、実用的なスピーキング能力をはかるテストとしてスタートを切りましたが、初回実施が2004年ということを考えると時代の波を確実にとらえて先手を打っていたと言えるでしょう。

どうやって受けるの?

個人受験と団体受験がありますが、いずれも電話でおこなうテストということに変わりはありません。事前にまず「TSST」のウェブサイトから申し込みをして、試験実施期間というのを設定してもらいます。いつもだいたい1週間です。たとえば、ある月曜日の夜中0時から次の月曜日の18時まで、のように設定されます。この決められた期間内に受験するのがマストとなります。
申込完了時には受験者IDとテスト用の専用電話番号が提供されます。受験者は24時間いつでも自分の好きなタイミングで、事前に指定された電話番号に電話をかければいよいよテスト開始となります。自宅でも職場でも、電話さえあれば自分の好きなところで受験することができます。こちらからかけるべき電話番号は決まっているものの、発信元の制限はありません。さて15分間のテストがこの電話を通しておこなわれるわけですが、固定電話からの通話であればこの電話料金はかかりません。ただし、携帯電話やスマートフォンからは有料のナビダイヤルです。この点だけご注意ください。

電話の相手は誰?

最大の疑問は、電話口の向こうにはどんな試験官がいるかということですよね。実は生身の人間はいません。事前に録音された自動音声でテストが進行されます。こちらの回答も録音されます。ゆえに、24時間いつでも受験可能なのです。このことからもおわかりのように、「TSST」は話者双方向のコミュニケーションテストではありません。この点だけはじめにしっかり共有しておきたいと思います。
はじめにテスト前の短いガイダンスが流れたあと、計10問の質問がされます。まず日本語で1回、次に同じ内容の英訳が1回。これはどの受験者にも正しく質問を把握してもらうための措置です。1問目の質問が日→英の順に流れてから45秒の回答時間が与えられます。45秒が経過すると2問目の質問が流れます。同じように45秒の回答時間があり、次の質問となります。ということは、自分ひとりで45秒もしゃべり続けないといけません! しかも10問もです! 会話のキャッチボールではありませんから、「How about you?」のように相手に切り返して時間稼ぎをすることもできません。実際に受験してみると45秒というのは意外に長いもので、筆者は途切れず言葉をつながなくてはいけない状況が精神的にとてもこたえました。
では、どんな問題が出題されるのか以下に詳しくみていきましょう。

どんな問題が出るの?

「TSST」のウェブサイト上には、次のサンプル問題が1問だけ示されています。

・重要な会議に出席するときは、どのような準備をしますか?
How do you prepare when you attend an very important meeting?

 さて実際に受験した筆者が思い起こす限りでは、次のような内容の質問をされました。(記憶があいまいなので、英語でどう聞かれたのかは割愛させてください。)

・詳しくあなたの自己紹介をしてください。
 ・あなたは両親と一緒に子供がずっと住むことに賛成ですか、反対ですか?
 ・好きなスポーツ選手の名前を一人挙げてください。また好きな理由を教えてください。
 ・あなたの家に留学生が来ることになりました。あなたの家のルールについて説明してください。
 ・子供の早期英語教育について、賛成ですか、反対ですか?

 ざっと見るとそんなに混み入った内容でなく、あくまで日常会話をベースとしたものが多いですね。その意味では、ふだんから英会話を習っている人は有利と言えます。英検1級のような「移民問題」「国内産業保護」といった社会性の強いことは問われませんから安心してください。

受験料はいくら?

受験料は税込8,640円で特に安い印象は受けませんが、のちに細かく提供されるフィードバック資料を考慮すれば適正価格と言えます。定点観測的に自分のスピーキング力をはかっていきたい学習者にとっては、半年に1回や1年に1回の割合で受け続けるのに1回あたり10,000円以下に抑えてくれているのはうれしいですね。自動的に4技能試験になっている英検については、受験者数が圧倒的に多くスケールメリットがあるため、1級でも1回あたり税込8,400円という大変リーズナブルな価格を実現していますが、これは例外中の例外と言ってよいでしょう。

必勝テクはある?

ずばり「ある」と言っていいと思います。まず、テストを受けるタイミングが大切です。朝一の起き抜けの状態では、そもそも日本語でも質の高い言語構成ができませんから、おすすめしません。せめてNHKのラジオ英会話なんかを聞いて、頭の中の英語スイッチをONにしておくことをおすすめします。英語を使って仕事をする人であれば、会社の昼休みなんかを利用するとよいでしょう。ほかにたとえば、カフェで英会話レッスンをした直後だと、十分にウォームアップできているので理想的なタイミングでしょうね。
また、こちらは事前準備の話です。「話題」については何が聞かれるかわからないので準備できないものの、「使いたい構文」「使いたい表現」などは心の中でしっかりとシミュレーションしておくことができます。なるべく単文の連続にならないように、even if や as long as を使ってみようですとか、逆接が but だけにならないように however も言えるようにしておこう、といったことです。決まった言い回しばかりにならないように気をつければ、表現バリエーションが豊かという点でそのぶん評価が高くなります。使用ボキャブラリーも、さまざまなレベルのものを織り交ぜれば高印象です。中学英語だけでペラペラ話せるようになる、なんて趣旨の教材も多く出回っていますが、やはり高校英語で習うような単語もある程度使いこなせるようになっておきたいものです。発音や文法の正確性も評価対象なので、言ってみれば何だって立派な対策になります。シャドーイングしかり、文法問題を解くのもしかり、です。

評価結果はどうやって得られるの? どんな評価がされる?

テスト終了後だいたい3週間経ってから、メールで結果が送られてきます。全部で9レベルでのスピーキング力評価となっていますが、「レベル6」以上を「英語で仕事をすることができるレベル」と実施団体側は設定しているそうです。筆者はこのうち「レベル7」の評価でした。「レベル9」はネイティブに近いという最高評価ですから、さすがにはじめから目指していませんでしたが、あわよくば「レベル8」まで行くかなぁと少し期待していたのでこの結果は残念でした。まあ、まだまだということですね。
各レベルの基準はだいたい以下のようです。
●レベル1 コミュニケーションに至らないレベル。聞き手側の忍耐が必要。
●レベル2 頭の中に単語は浮かぶものの、文を組み立てるのにたいへん時間がかかる。
●レベル3 考えながらゆっくり単文かつ短文をひねり出せる。
●レベル4 単文をつなぐことで短い往復数のコミュニケーションがとれる。
●レベル5 簡単な英会話ができる。海外旅行はじゅうぶんに切り抜けられる。英検準1級ぐらい。
●レベル6 ときどき流暢に、ときどきつっかかりながら、自然な英会話が成り立つ。
●レベル7 テーマが日常的であればまったく不自由しないコミュニケーションがとれる。英検1級にかろうじて合格するレベル。
●レベル8 自分の意見をライティングのようにまとまった流れで伝えることができる。英検1級に問題なく合格するレベル。
●レベル9 ノンネイティブが話していることは印象として残ってしまうものの、ネイティブとまったくひけをとらず会話ができる。リズムやイントネーションが自然で、話題に応じた使用語彙も適切。

結果通知表にはほかに、個人の話し方の癖や発音、ボキャブラリーなど、採点者がひとりひとりに個別のメッセージを記してくれていますので、今の自分の実力をしっかりと見つめるのに非常に親切なフィードバック内容となっています。筆者の場合は「時制の一致でミスが出やすい」としっかり分析結果をもらいました。

ところで、どんな人が受けるの?

そうですね、テストじたいがまだそこまで広く認知されていませんので受験者層がどういった人たちなのか謎ですよね。本テストの開発意図としては社会人を対象にしていたようですが、意外にもこの2~3年は高校現場での採用が広がっているようです。つまり団体受験です。リーディングとリスニングについては、ノウハウの蓄積があるのでつぶさに生徒の力を測定することができますが、スピーキングとなるとせいぜい松竹梅ぐらいしかざっくり評価できないのが実情です。なぜなら、教師自身もスピーキングはきちんと誰かに教えてもらっていないまま現場で教鞭をとらなくてはいけないからです。評価の仕方じたいもこれから手探りで設定していくために、このように民間実施試験の力を借りているのが実際です。

さて、どんなテストかざっくり概要をつかんでいただけたでしょうか?「TSST」は電話で受けられるというのが隠れた評価点だと筆者は思っています。PCやスマホで受験するなら、アプリを事前に入れたり、マイクの設定をしたりと、地味に準備が大変です。英会話を習っている方は、ぜひどうぞ「TSST」を一度お試しください。

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