NBAのブライアントが誕生した日~1996年ドラフト裏話

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 2015年11月に引退を表明したNBA(National Basketball Association)のスーパースター、コービー・ブライアントは、17歳でNBA入りして以来、ロサンゼルス・レイカーズ一筋で20年のキャリアを終えました。

 歴史に残る大選手がレイカーズに入団した年のドラフトの裏話を読みながら英語を勉強しましょう。(英文は、”How the Lakers nearly missed out on Kobe Bryant” USA Today 2016/4/6付)

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☆高校から直接ドラフト

 ブライアントは、NBA選手だった父親譲りの才能が高校3年の時に開花して一躍注目選手になりました。しかし当時は、高校を卒業したばかりの選手がNBAでは通用しないというのが常識で、彼が1996年のNBAドラフトにエントリーした時も、各チームの評価は分かれていました。

To draft a player straight out of high school would require a leap of faith for any NBA team.
 高校を卒業したばかりの選手をドラフトで獲得するのは、NBAのどのチームにとっても思い切りの要る賭けだ。

・straight:直接(←真っすぐに、急いで)
  Come straight home.
   寄り道せずに真っすぐ帰ってきなさい。
・leap of faith:信頼に基づく賭け
  leap of faithは証明できない事柄について、信じることを選択すること。
  これには「非論理的」などの否定的ニュアンスと、「信頼・信仰・思い切り」などの肯定的ニュアンスとの場合があり、今回は否定的な意味で使われています。
  否定的な意味では、blind faith(無批判に信じる「愚行」のニュアンス)もあります。
  You are relying on blind faith. (You are relying on a leap of faith.)
   あなたは根拠のない盲信に頼っています。

 前年のNBAドラフトで、ミネソタ・ティンバーウルブズはケビン・ガーネットを指名していました。これは高校を卒業したばかりの選手としては実に20年ぶりのことで、大学に進学するつもりでいたブライアントは、これを見てプロ入りの決心をしました。

But those were all big men whose size could enable them to have an immediate impact in an era when big bodies still dominated the game. Taking a 6-6 shooting guard like Bryant would be a much bigger gamble.
 しかし彼ら(ガーネットや、高卒ルーキーから活躍した往年の名選手たち)は皆長身で、巨体によって試合を支配できた時代にあっても即戦力となり得た。ブライアントのように6フィート6インチ(198センチ)のシューティングガードを獲得するのは、はるかに大きなギャンブルだった。

・enable(人)to:(人)を〜できるようにする
・dominate:支配する
・shooting guard:シューティングガード
  3点シュートなど長距離からのシュートを得意とし、得点を稼ぐのが役割。司令塔であるポイントガードよりも攻撃的な役割を担っています。

 実はブライアント自身もこの点に不安を抱いていたそうですが、ドラフト前に行われたワークアウトで、レイカーズのジェリー・ウェストGM(ジェネラル・マネジャー)がブライアントの才能に惚れ込み、獲得方針が決まりました。

☆ レイカーズの戦略

 しかしレイカーズには問題がありました。そのドラフトの順番は24番目で、思い通りの選手を獲得するにはあまりに不利だったのです。

West and Tellem knew that when the Lakers drafted at No. 24, Bryant would be long gone. How far would they have to move up?
 ウェストとテレム(ブライアントの代理人)は、レイカーズが全体の24位の指名をする頃にはブライアントはもう獲得できないことがわかっていた。そこでどこまで順番を上げればいいのかと考えた。

・long gone:とっくにいなくなっている、いなくなって久しい
 “Where is he?”
 ”He is long gone.”
  「彼はどこ?」
  「とっくにいなくなったよ」

 高卒ルーキーという点で疑問符が付くとはいえ、ブライアントは24位まで残っているような選手とは見られていなかったのです。
 ところで最後の文は少し説明が必要です。これは先にブライアントを指名したチームに対し、現役選手とのトレードを申し入れるということです。当然、両方のチーム事情が合うような人繰りができなければ話はまとまりません。

They figured the Charlotte Hornets at No. 13 were the Lakers’ best shot. Tellem’s biggest fear was that the New Jersey Nets at No. 8 would take Bryant.
 2人は13位のシャーロット・ホーネッツがレイカーズにとって最も好都合だと考えた。テレムが最も恐れたのは、8位のニュージャージー・ネッツがブライアントを指名することだった。

・figure:考える
・best shot:最高

 
 その年、レイカーズはオーランド・マジックからフリーエージェントになったセンター(ゴールに最も近い位置でプレーする体格に優れた選手)のシャキール・オニールを獲得する計画を立てていました。そこで、レイカーズは、現役センターのブラデ・ディバッツをブライアントとのトレードでホーネッツに放出することにしました。

☆「チェスのゲーム」

 もっとも、その時点でオニールのレイカーズ入団は決まっていませんでした。もしブライアントを指名した後でオニールに断られれば、レギュラーのセンター不在というリスクがありました。

“The draft is a chess match,” said Kupchak. “We floated rumors that we were going to take somebody else to get people thinking. It’s called gamesmanship. You just hope that Kobe is there when Charlotte drafts, but you don’t know.”
 「ドラフトはチェスの試合だ」とカプチャック(現レイカーズGM)は話す。「我々は誰か他のセンターを獲得する予定だという噂を流して、他チームを考えさせた。これがかけひきというものだ。シャーロット(ホーネッツ)の時までコービーが残っていることを願うしかないし、そうなるかどうかもわからないのだ。」

・float a rumor:噂を流す
・get (人) 〜ing:(人)に〜するように仕向ける
・gamesmanship:かけひき

 結局8位のネッツはガードのジェリー・キトルズを指名し、13位のホーネッツがブライアントを指名した時点で、レイカーズの作戦は成功したように見えました。

 ところが、トレードの話を聞いたディヴァッツは他のチームでプレーするくらいなら引退しようと考えたのです。ディヴァッツはまだ28歳でしたが、レイカーズ生え抜きで7年間活躍し、レイカーズとLAに限りない愛着を感じていました。

 ディヴァッツがその考えを夫人に話すと、彼をじっと見つめて「バカじゃないの?」(Are you stupid?)と言ったそうです。彼はこの一言で引退を思いとどまりました。

☆ 最高のドラフト

 これでブライアントの獲得が決まったウェストGMはレイカーズのオーナーに「今年のドラフトで最高のプレイヤーを獲得しました」と、喜びの報告をしました。もちろん、一番喜んだのはブライアントでした。

“It felt too good to be true,” he now says. “This doesn’t happen. You grow up loving a team and then, all of a sudden, you are get drafted by that team straight out of high school. Then, I wind up playing with them for my entire career.”
 「まるで夢のように感じました」とブライアントは言う。「こんなことはそう起こりません。子供のころからこのチームがずっと大好きで、それが突然そのチームから高校卒業と同時に指名されるなんて。そして、結局キャリアの全てをこのチームでプレーすることになるのです。」

・too good to be true:まるで夢のようだ
  「話がうま過ぎる」という意味で使うこともあります。
  It’s almost too good to be true, but it is true.
   あまりに良い話でうそのようですが、それは真実です。
・all of a sudden:突然
・wind up 〜ing:結局(最後に)~になる
  You may wind up losing your house.
   家を失う羽目になるかもしれない。

 20年の間にオールスター出場17回、シーズンMVP受賞1回、NBA優勝5回をレイカーズで達成し、オリンピックでも2度の金メダルに貢献したという輝かしいキャリアは、綱渡りのような1996年のドラフトで始まったのでした。

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