ハイフンを使って、いきいきとした英語表現に

単語・フレーズ
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みなさん、「ハイフン」の正式名称をご存じですか? そうです、「ハイフネーション(hyphenation)」です。これを使えば、2つの語が連結して1つの語のようになります。ときには3つ以上の語が連結することだってあります。今回はこの「ハイフン」が英語表現にどんな役割をもたらしているかを以下に記してまいります。

「ダッシュ」にそっくりだけど??

 確かに見た目がそっくりですね。「ダッシュ」も「ハイフン」も、どちらもなんとなく1本の横棒といった印象で、両者の使われ方の違いにはこれまでさほど気を配ってこなかった方がほとんどだと思われます。結論的には「ダッシュ」のほうが長い横棒になっており、「ハイフン」は概して短く半角1つ分の長さになっていることがほとんどです。手書きだと棒の長さが非常にあいまいになってくるわけですが、まあそこはご愛敬ですね。
役割としては、「ダッシュ」は文章を区切り、「ハイフン」は単語を区切るときに使われます。例で見てみましょう。

【「ダッシュ」の使用例】
The way how Mrs. Dot teaches English ― if I’m allowed to say ― is terrible.
(ドット先生の英語の教え方は、もし私が言うことが許されるならば、それはひどいものだ)
【「ハイフン」の使用例】
He is a well-known singer in Japan.
(彼は日本で有名な歌手だ)

実際にこのように英文で見てみるとわかりやすいですね。「ダッシュ」にもいくつか使い方の定義がありますが、上記の例では「挿入」というものにあたります。ドット先生について第三者目線で叙述するのではなく、自分の目線も交えて話していますよね。こういったときに使うのが「ダッシュ」です。一方で「ハイフン」の使われ方ですが、ここでは「合成語」を作る目的で使われています。そう、all-you-can-eat restaurant「食べ放題のレストラン」と言うときの、この「ハイフン」がまさにそうなのです。

気づけば「ハイフン」で作られた合成語がたくさん!

 日本語にも、見渡してみれば多くの合成語が存在します。「就活」「婚活」「妊活」「終活」…、パッと思いつくだけでもずいぶんありますね。なかには定着度が高まり今後ずっと半永久的に使われそうなものや、トレンドを表す”新語”として短期間だけ使われそうなものもあります。日本語は表意文字である「漢字」の文化があるからこそ、手軽に合成語ができてしまうのですね。
 一方で表音文字であるアルファベットですが、単語と単語の意味をハイフンでつないで「何が+どうする(される)」「何を+どうする(される)」という前後関係をもとに合成語を作っています。辞典に載っている代表的な表現にとどまらず、バリエーションに際限がないのがハイフンによる合成語の特長の1つです。あなたが独自に言葉を作ってしまったってかまいません。見てすぐわかる、聞いてすぐわかる、これがミソです。前後にある単語どうしはよく知られたものを使うわけですから、できた合成語の意味はいとも簡単に想像できてしまうのです。
この便利なハイフンを使った合成語ですが、文法的にこまかく見ていくと1記事ではとてもおさまらないので、ここではポイントを絞って「話し手のトーンをよりいきいきとしたものに変える」点についてお伝えしてまいります。

1語でバチッ!と決めるから躍動感が出る

人にインパクトを与えながらあなたの話を伝えたいときは、話し言葉でも書き言葉でも、単語のチョイスは大事です。そう、たとえばあなたが「昨日すっごくイイ買い物しちゃったの!」と友人に伝えるときには、ハイフンを使った合成語で次のような言い方ができます。

【例】
I had a life-changing purchase yesterday!  Guess what?? 
(昨日、人生が一変するような買い物をしたのよ! 何だと思う?)

たとえばそうですね、別荘を契約したとか、車を買ったとか、生活のニュアンスがこれまでと変わるような買い物をしたことがこの表現から伝わります。共働き夫婦なら、「家事ロボットを買ったの!」なんて場合にぴったりの表現ですね。これをハイフンなしで表現するとどうでしょうか。

【例】
Yesterday I had a good purchase that will surely change my life!  Guess what??
(昨日、人生が一変するような買い物をしたのよ! 何だと思う?)

どうですか? 同じことを言っていても、ちょっとまわりくどく感じませんか? 何より「ねえねえ!聞いてよ!」という話者の感動が、これではうまく表れません。短くストレートに伝えるからこそ生まれるニュアンスは、「ハイフン」のおかげなのです。

「自分はこう感じている」がリアルに表れる

ふだん聞き慣れたものから初めてのものまで、ハイフンを使った合成語は数えきれないほど存在します。「mother-in-low」(義母)、「newly-wed」(新婚夫婦)、「state-of-(the-)art」(最先端技術の、最高水準の)といった表現はよく日常でも使われますから、あなたも自分のボキャブラリーとして無意識のうちに口から出していることでしょう。これはこれで定型表現として覚えておくのによいですね。なにより1語で済むのが便利です。
それとは別に、以下のような”感動”を込めた表現も身につければ、あなたのアウトプットにますます躍動感が生まれること請け合いです。

【例】
Hey, stop screaming right now! That’s an ear-breaking noise!
(おい、今すぐわめくのをやめろよ! 耳がおかしくなりそうなほどの音量だ!)
This is a once-in-a-lifetime encounter for you. Don’t miss her.
(これは君にとって一生に一度あるかないかの出会いだ。彼女を逃すなよ。)
Come on!  “Horrible XXX” is truly a must-see movie in hot summer!
(さあ、『ホリブルX』は暑い夏にぜひ見るべき映画だよ!)

もしこれらを関係代名詞whichや関係副詞whereを使いながら表現すると、語数は倍ほど必要になります。なにより話し手のエネルギーが感じられない、非常にプレーンな印象になってしまいますね。
それに、うるさく音を立てる相手に「うるさい」と伝えたところで、どれほどあなたが不快に感じているのかはわかってもらえないのではないでしょうか。相手の立てる音を very noisy, super noisy, extremely noisyなんて言ってみたところで、 an-ear-breaking noiseの威力には勝てません。相手を説得したり、自分の本気度を肌で感じてもらうために、ハイフンを使いながら端的にズバッとひとことで伝えるのは1つの話術だとも筆者は思っています。

ハイフン」は分数表記にも欠かせない

ここからは予備知識です。「ハイフン」には、よく知られた使われ方もあります。そうです、「分数」を表すときです。たとえば「3分の2」は「2/3」とも「two-thirds」とも書きますね。ちなみに分子が「1」のときですが、たとえば「4分の1」なら「one-forth」でも「a-forth」でもどちらでもかまいません。
なお「100分の1」は「1/100」であり「one(a)-hundredth」でもあるのですが、このように分子か分母に大きな数字を用いるときにはあえてハイフンを使ってスペルアウトせず、「1/100」とシンプルに表記することが多いですね。

「ハイフン」は、実は1語の中も区切っていくことも

こちらはDTPや書籍編集に携わったことがある方はピンとくるでしょう。そうです、行送りで使う「ハイフン」の話です。行末にもし長い英単語があり1行に収まりきらないときは、泣く泣く1語を2つに分けます。このとき「ハイフン」が使われるわけです。
タイピング中に行末を迎えてしまったら、その行末の最後のアルファベットで自動的に区切っていいわけではありません。決まった音節で区切らなくてはならない、というルールがあります。たとえばhappyであれば、hap + py という2音節でできている単語なので、区切るところは hap と py の間になります。勝手にh と a で区切ってはいけませんよ。p と y の間もだめです。各単語の正しい音節区切りがどこなのかは英和辞典を開けばわかります。
ただ、こういったことは心配しなくても、昨今のタイピングソフトは”設定”することによって「音節のところで行送りハイフンを入れるようにする」ことできますから、一般英語学習者としては特に気にしなくてよいでしょう。英語印刷物の編集者やDTP従事者などの特殊業務にあたる方は注意を払ったほうがよいですね。

いかがでしたでしょうか、「ハイフン」を身近に感じていただけましたか? さまざまな使われ方があるなかで、合成語を作るのにハイフンが使われる例はぜひ注目していただきたいと思います。知っている単語どうしをうまく結びつければ、あっという間に躍動感のある表現に早変わりです。まずは英語記事やネイティブが投稿するSNSで使われている表現を借用することから始めてみましょう。わざわざ意味を調べなくても、きっといずれもすぐに想像できるものばかりです。
語彙力とは、単に「知っている単語の個数」の累積ではありません。単語と単語をかけあわせた合成語だって立派な語彙の1カウントです。ハイフンに目をつけたなら、レバレッジをかけてどんどん増やしていきましょう!

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