訪日外国人向けガイド仕事 (個人旅行客の場合)

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こんにちは。前回のバスガイド(団体客)のエピソードに引き続き、本記事では個人旅行者向けのガイドの話をシェアさせていただきます。

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その① 英語を「話し続ける」「聞き続ける」精神的な疲れ

英語圏からのお客様をお迎えするにあたり、特に「個人旅行」のアテンドをするガイドは1日中英語を話すことが求められます。バスツアーなどの団体客のアテンドに比べて個人旅行ではカジュアルな会話場面が増えますから、そのぶんだけどうしても発話量は増えます。
団体旅行ガイドは旗を持って団体を率いていきますが、個人旅行ガイドは常にお客様の隣に並んで歩くためです。たとえば電車移動で30分かかるなら、車内でもお客様の隣に座って30分ずっと小声の英語でお相手をしなくてはいけません。

団体客の場合は、ガイドが前に立ち「スピーチをする」ような感じで、マイクを握りしめて一方的に話しかけます。インタラクティブではないということですね。事務連絡はもちろん、車窓から見える景色なども覚え込んだマニュアル通りにしゃべります。
また、たとえば午後にはバスの移動中に座席で眠り込むお客様が多いので、30~40分ほどBGMを流して静かな空間をつくります。お客様個人とやりとりする場面も少しはあるものの、団体旅行ガイドは意外と「英会話」から免除される時間帯というのはあるものなんです。
英語スイッチをon / off はっきりと分けることができる団体旅行ガイドに対し、個人旅行ガイドでは常にスイッチonということになります。

その② ネイティブどうしの会話はやはり早い!

これはいつまでも筆者の劣等感を刺激して止まないのですが、英語ネイティブどうしの会話に日本人ガイドは置いて行かれてしまいがちです。

仮に、家族旅行で4人のお客様がお越しだとします。
ガイドに対しては代表でお父様かお母様が、気を遣って単語を選んで、ゆっくりとわかりやすく話しかけてくれるケースがほとんどです。英検のリスニングテスト音声のような感じでしょうか。ほとんどスラングは出てきませんし、聞き取りやすいです。
でも、家族4人でネイティブどうしのスピーディーな会話が始まると、筆者は半分くらいしか聞き取れません。5歳児くらいまでの子供が話す英語も、これまた聞き取りが難しいです。こうなると完全に自分は蚊帳の外となり、少し寂しくもあります。
彼らはスラングを使うだけでなく、発音がlazyになり強烈なリエゾンが起こります。市販のリスニング教材でも英会話スクールでも絶対に耳にしない強烈なリエゾンは、筆者にとっては悩みの種です。筆者が英米豪に留学をしていたらまた別だったのかもしれませんね。

家族の会話の展開を詳細に追いつつ、「では次は〇〇をしませんか?」などと提案できるのがガイドとしてベストなふるまいですが、まだ筆者はそのレベルに達していないので、家族どうしで出した結論を代表者から伝えてもらう、ということをしています。まだまだブラッシュアップが必要ですね。

その③ ローカル視点での旅を希望

さて、団体ツアーを選ばずにあえて個人で来日するお客様の望みとは、いったい何でしょうか? ガイドブックに載っている「〇〇タワー」などのツアースポットを効率的にいくつも回るのであれば、やはり団体客用のツアーバスに軍配が上がります。東京で言えば、1日5スポットをカバーするとして、それでも2日あれば23区内の有名どころは回れてしまいます。

個人旅行でいらっしゃるお客様は、やはり地元民と同じ体験を求めていらっしゃるようです。公共交通機関を使い、また「吉野家」「松屋」のような牛丼も食べてみて、100円ショップでわんさか買い物をしたいなんて方も意外に多くいらっしゃいます。お好み焼きやもんじゃ焼きを自分で焼いてみたい、日本酒の飲み比べをしてみたい、回転寿司屋に入ってみたい…など。確かにこれらは団体旅行では得難い体験ですよね。

なかにはユニクロのウルトラライトダウンジャケットを親戚10人分買って帰る約束をしている、なんてお客様も過去にいらっしゃいました。銀座の12階建てユニクロビルと5階建てGUビルで合わせて半日過ごすというのは、外国人旅行者にとって珍しいことではありません。日本人にとっての「当たり前」が、彼らには「貴重な体験」であることを特によく物語っているのが、このユニクロビルでの買い物でしょう。
ほかに、マニアックなところに焦点をあてた旅をお望みのお客様もいらっしゃいます。原宿ロリータファッションや秋葉原のオタク文化に足を踏み入れることができるのも、個人旅行ならでは。Samurai体験やNinja体験はもちろん、桜の下にレジャーシートを敷いて花見することだって、個人旅行はかなえてしまいます。

その④ 電車やバスに乗る感動

個人旅行では、まれに「1日/半日チャータータクシー」という手段を選ぶ方もいますが、ほとんどは電車やバスを使ってのウォーキングツアーとなります。
ICカードで駅の改札をピピっ!と通り抜けること、夕刻の帰宅ラッシュの電車内でもまれること、乗り換えにチャレンジしてみること…どれをとっても旅行者には新鮮なようです。通勤するサラリーマンたちの表情や、通学する高校生たちの制服、最新タイプのベビーカーで乗り込む母親と赤ちゃんの姿など、目に入ったものからつぶさに日本人の生活を想像することができるようです。

日本では私立校や国立校に通う小学生が、だれの付き添いもなく1人で電車通学するわけですが、外国人旅行者の目にはたいへん奇異に映るようです。それもそのはず、多くの外国では12歳以下の子供だけで自宅に置いておくことももちろん、外出させることも禁じられていますからね。「日本はsafeでいいね」ですとか、「日本人の子供はindependentだ、Wow!」なんて感想をよく聞きます。

さらに東京メトロ東西線のホームで見られるように、朝の通勤時間帯に乗客を電車のドア内に押し込む駅員がいることも彼らの驚きをさらいます。こういった”押し込む”ための人員が通勤ピーク時に配置されるわけですが、多くの外国人旅行者が「Pusher!」と言ってこの光景をカメラで撮影します。この路線の乗客の多くが丸の内の金融エリアに向かう典型的なジャパニーズ・ビジネスマンなわけですが、こういった人たちを間近に見ることができるのも彼らには嬉しいそうです。
ときに「みんなKaroshiするの?」なんて質問をストレートにぶつけられることもあり、筆者としては答えに困窮します。ついでに、エリートサラリーマンの中には英語が話せる人も当然いるでしょうから、彼らに車内で自分の英語が思い切り聞かれてしまうのはちょっとプレッシャーでもあります。

その⑤ 食事はほとんどごちそうしてもらえる

 多くの場合、お客様の好意でガイドの飲み物や食べ物をごちそうしてくれます。
料亭に行くわけではないので、ランチだと1食500~1000円程度となります。牛丼屋やラーメン屋もあれば、「大戸屋」「やよい軒」などの和食チェーンレストランに行くときもあります。

 夜のアテンドは、ガイドとしてもたいへん満足がいくものになります。居酒屋体験を希望される方が多いので、いつもそこで2時間ほど過ごします。
このあいだもガイド料金は発生しているのでもちろん1品ずつ食べ物の説明をしたりマナーの説明をしたりはしますが、ガイドの飲んだビールや焼酎、日本酒などもすべてお客様が支払ってくれるケースがほとんどなんです。お酒が大好きな筆者には、夜のアテンドはたいへん幸せな時間でもあるんです…! 会計は折半、ないしは1000円札1枚だけでも受け取ってもらえるように話してはみるものの、かたくなに「Be my guest.」と先方が言ってくれるので、筆者の場合はありがたくそのままごちそうになっています。

逆に、ガイドの「交通費」に関しては事前に特別の取り決めがない限りガイド持ちのことがほとんどなので、多い日だと2,000円ほどが自腹の交通費として消えてしまいます。それでも、ごちそうになった食事代のことを考えれば、トントンであるか、むしろプラスであることのほうが圧倒的に多いですね。

その⑥ 残飯処理でお腹いっぱい!

 こちらは、隠れた「ガイドあるある」です。少しずつ多くの種類の食べ物にトライしてみたい外国人旅行者にとっては、「口に合わず残してしまったらどうしよう」という不安がつきものです。このとき隣にローカルのガイドがいれば、「残ってしまったものは、この人に食べてもらおう」という安心感が働くので気軽にトライすることができます。またこちらから申し出て、「最後は食べ慣れている私がなんとかするので、まずは一口だけトライしてみてください」と言います。
個人旅行のお客様にはいつもストリートフードの食べ歩き体験をしてもらうので、たとえば「みたらし団子」であれば1本だけ注文し、「旦那様が1つ、奥様が1つ、残り2つはガイドの私がいただきます」と言います。冷たい緑茶も、ストローを何本かもらってみんなで飲みます。寿司も2貫セットなので、1貫目ずつお客様とガイドで分けます。こういうふうに自分が受け皿になることで、お客様の食体験を広げてあげることができるわけです。

 ときどき、緑茶と煎茶とほうじ茶を頼んで、どれもお客様の口に合わなかったなんて残念なケースもありますが、店員さんに申し訳ないと思ってガイドが全部が飲み干すとあとで腹痛に襲われます。
同じように外国人にとっては甘すぎる和菓子についても、何種類か注文して大量に食べ残しが発生した場合、ガイドが残りを全部食べようとするとどうしても無理がかかります。ある程度はどこかで線引きをして、店員さんに「おいしかったのですが食べ切れずすみません」と誤ってから立ち去るようにしています。そうしないと、たこ焼きに鯛焼きに磯辺焼き…ガイドは胃を壊してしまいますから。

以上、個人旅行ガイドの仕事の実態をお伝えしました。仕事のよいところ、悪いところ、どちらも正直に書きましたが、総じて「ガイド業は楽しい!」と筆者としては強く思います。お読みいただきありがとうございました。

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