知らなかった! 英語長文読解問題集はこう作られる

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こんにちは。元・英語教材編集者のころすけです。かつて出版社の英語編集部にて、何十冊もの長文読解問題集を作ってきました。ユーザーの立場ではおそらく気に留めないであろう作り手視点での話を、本記事にていくつかシェアしていきたいと思います。どうぞお気軽にお読みください。

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実は英文法の知識確認問題も混じっている

すでにお気づきの方もいらっしゃることでしょう。一般に英語の長文読解問題とは、内容理解力をためす問題と合わせて、文法事項の確認問題や語彙の確認問題も全体の30~40%ほど混じっているんです。高校や大学の入試問題においては、特にその傾向が顕著です。長文読解問題のふりをして、実は総合問題みたいなものですね。
偏差値が低い学校の入試ほど、文法問題や語彙問題が長文読解に含まれる比率が高いことが一般的です。ある程度の文法知識・語彙知識がないと、英文の内容理解はままならないものです。たとえばhardlyやbarely、seldomといった単語が否定の意味合いを含んでいることを知らなければ、文章全体の解釈に大きく影響が出てしまいますよね。また文法の面でも、たとえばno more than ~ と not more A than B の違いをきちんと把握していなければ、正しく読むことができません。英文中の下線部を和訳させる問題もときにありますが、これだって要は文法力や語彙力の確認のために設置されている問題です。このように、長文読解問題においても文法と語彙の占める重要度は意外と高いんです。

単語/熟語と文法を仕上げてから長文読解に挑もうと考えていらっしゃる読者様がいらっしゃいましたら、思い切って長文読解問題集をお買い求めになってしまうことをおすすめします。英文の中に出てくる文法事項は、解いて間違えることで身について行きますし、語彙だってしかりです。実際に問題を解きながら、脳がアクティブになっている状態で未知語に出会えば、あとで日本語訳を知ったときに吸収率がぐっと高まります。読解問題集は英語学習の最後の段階で取り組むものではありません。自転車に補助輪なしで乗れるようになるまでに、何度か転びながら、それでも少しずつバランスを保てるようになっていくのと似ています。とりあえず、文法と語彙に自信がなくても、長文読解にチャレンジしてみましょう。

純粋に英語長文の内容理解だけを問う問題集はないの?

内容理解だけに特化している英語長文問題集ならば、もちろん作りとしてはシンプルになります。しかし、想像してみてください。「次の選択肢(a)(b)(c)(d)から本文の内容と一致するものを1つ選べ」という問題ばかりがズラリと並ぶと思うと、ユーザーとしてはぞっとしませんか? そして何より、解説がたいへんboringになります! 「正解(a)を導き出す根拠は、第2段落第4文の…」と、参照箇所を示すものばかりになりがちです。忍耐力のある方なら問題ないのでしょうけれど、ひたすらこの手の設問ばかりが収録されているなんて現実的ではありませんね。
余談ですが、編集者や校閲者が長文読解問題集の原稿校訂をしているときにツライと思うことの1つに、「解答の根拠となる参照箇所が正しいかどうか」のチェックがあります。出版社側は常に最適な(つまり無駄なく最速の)正解の根拠をユーザーに提供する義務があるので、ほかに根拠となるのにふさわしい記述はないのか、あったとしてどちらの記述を参照させるのがベターなのかの判断をおこないます。解答の「決め手」となる箇所を明確に1つ示すわけです。これはとても地味で、根気と時間を要する作業です。そのため、編集者の集中力の途切れも見込んで、「〇段落〇行目」がズレていないかどうかを専門にチェックする外部校正者を雇うときもあります。たとえばクウォテーションマーク(“”)が文中に登場すると、第〇文目の数え方にミスが起こりやすくなります。ユーザーが学習時に不利益を被らないよう、参照箇所に誤りがないようにすることは基本中の基本です。

読者層に合わせ、語彙レベルを的確に調整する

英語長文読解問題集と言えば、ほとんどの日本人ユーザーが使うものは内容に専門性のない、いわゆる「ジェネラル・トピック」が収められたものが多いでしょう。気候の話、教育の話、衣食住の話などです。専門性のある内容だと、ある部分だけが急に語彙レベルが上がってしまうんです。語彙レベルは、英文全体が平たく同じ印象でないと読解問題集としては失格です。
語彙レベルのコントロールが完璧になされているものの代表格に、センター試験の英語問題や英検問題があります。これらは問題英文の最終版が完成されるまでに、何度も何度も検討が重ねられます。仮にどこかから拝借してきた英文であっても、過去の実施問題で出た英文と比べてレベルが上がっていないか/下がっていないかを厳格にみます。
このように、ある決まった語彙レベルを実現するための英文のチョイスというのは、ページ数の少ない英文読解問題集をたった1冊作るにしてもかなり重要な作業です。選んだ英文が企画にマッチしているのかしていないのかは英語編集部の中でもベテラン層でないと判断がつかず、実際には専門家の手を借りることが多いですね。解説を書く執筆者に英文を選んでもらうことが、実際に頻繁にあります。執筆期間の1/3は英文選定作業に充てられるほど、これは重要度の高い作業なんです。ここがうまくコントロールされていないと、その書籍企画は失敗です。問題集としてちょうどよい英文の長さで、また対象ユーザー層に応じた語彙レベルであり、同時に文法知識の確認も兼ねられるような英文素材でない場合は、ユーザーが使いにくいと感じてしまいます。
この点、「A大学入試過去問題集」とタイトルがついて販売されているものは、実際にA大学の入試問題をそのまま利用しているので、英文の掲載について出版社で検討する必要はありません。検討が重ねられた段階というのは、むしろA大学が入試問題を作るときです。例年と同じ難易度が保てているか、しっかり注意を払っているわけです。

英文の著作権処理① ~お金を払って、英文を使用する~

英文と一口に言っても、オリジナルで書き起こしたものと、すでに誰かが書いたものを借用したものとがあります。誰かが書いたものを借用することを、出版業界では「転載」と表現します。
英語長文読解問題集に英文を転載するにあたり、出版社は英文を書いた人あるいは事務所と連絡をとり、契約書を交わしたのち出版社側が著作権者へ「著作権使用料」を支払います。300語程度の英文借用である場合、2,000円程度のこともあれば50,000円に及ぶこともあり、さまざまです。筆者は過去に600語の英文1件の利用で、240,000円もの支払いをした経験があります。予定していた原価をずいぶんと超えてしまう場合には、載せたかった英文は泣く泣くあきらめ、ほかの英文を検討するのも英文を扱う出版社ではよくある話です。
英文使用許諾交渉のとき、出版社ははじめに提示する出版計画書にて「初刷〇〇〇〇冊、1年ごとに重刷〇〇〇〇冊」のようなだいたいの出版見込数を伝え、それを大幅に上回るようであれば追加支払いを要求されることも珍しくありません。著作権というのは、いまや1つのビジネスです。そのため、法外な値段を請求してくる著作権者もいます。残念ながらこの場合は編集者がみずから窓口となって英語で相手と交渉しなくてはいけませんが、大手出版社だと著作権処理専門の法務チーム員がいることもあります。

英文の著作権処理② ~英語長文問題集は値上がり傾向?~

「著作権」は、もはや文芸作家や有名カメラマンだけのものではありません。あなたの書いた日記にも、著作権が発生する可能性だってあります。売れっ子作家や作詞家などの華やかな世界の案件だけでなく、英語長文問題集づくりのような業界的には目立たない案件にだって必ずお金のやり取りを発生させることが当たり前になったこの10年、英語長文問題集の制作原価は大きく膨らみました。逃げることなんてできないんです。常に監視されているわけですから。30本英文を収めている問題集があれば、自動的に30本分の著作権使用料を払わねばならないのです。(ごくごくまれに、無料で使用許諾を与えてくれる著作権者もいます。)
さらに昨今は、問題集に収められている英文の音声をユーザーがPCやスマホでダウンロードできるようにすることは、購入の検討において必要最低限の条件となりました。音声サービスにも対応しつつ、英文著作権処理も同時におこなっているので、出版社は軒並み「原価up」、それを反映して「商品価格up」となっているわけです。10年ほど前には1,000円ジャストで売られていたものも、今では1,150円ほどで売らないと出版社の利益が出ないようになっています。印刷ロットが少ない商品であれば、1,300円ほどにしないといけない場合もあるでしょう。

英文の著作権処理③ ~英文転載は自分には関係のない話?~

どんな書籍でも、巻末によく「無断転載を禁ず」と断り書きがありますよね。無断でないなら、つまり”しかるべき手続き”を踏めば転載してもよいということですが、これは著作権使用許諾を得て、請求された金額を著作権者に支払うことを指します。個人でおこなう手続きとしては、少々ハードルが高いかもしれませんね。それでも、無断で転載は厳禁であることに変わりありませんから、面倒とはいえしかたのないことだと思います。

では、高校の期末試験などで「教科書と同じ英文がテストに出ている」場合はどうなんでしょうか? 学校側はいちいち教科書会社と手続きの相談をしているんでしょうか? 答えはNoです。著作権法第36条では、学校の定期テストで使用するときには手続きは不要だとしています。しかし、塾や家庭教師が同じことをおこなえば、著作権法違反となります。英語の定期テスト対策として、塾講師や家庭教師が教科書の英文を利用して予想問題を作ったとします。ありがちなこの行動に著作権使用許諾手続きが必要だなんて、だれが思うでしょうか。けれど、必要なんです。なぜなら、塾も家庭教師も、利益を得ている立場にあるからです。生徒から授業料を受け取っているからです。
こんなふうに、勉強という崇高な目的であっても著作権法違反となってしまうケースは、日常にあふれています。英文だけでなく、写真/映像の無断転載なんかにも気を付けたいところですね。

いかがでしたでしょうか。英語長文読解問題集を作る現場が主に気にしていることは、著作権と語彙レベルでした。続く記事では、英作文問題集の作り方についてお伝えしたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

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