aとtheと無冠詞はどう区別するの?~冠詞の悩みを解消します

単語・フレーズ
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 これから「冠詞」の話をします。手始めに、次の3つの文を比べてみてください。この中で正しくないのはどれでしょうか?

 This is an apple.
 This is apple.
 This is the apple.

 冠詞は簡単です。なにしろ、aとanとtheの3つしかありません。名詞にこの3つのうちどれかを付ければ・・・と言いたいところですが、他に冠詞を付けない場合(無冠詞)もあります。また無冠詞とtheの場合には名詞を複数形にするかどうかということもあるなど、実は一番迷うことが多いのが冠詞(無冠詞も含む)の使い分けです。

 さて、最初の質問の正解ですが

「全部正しい」

です(すみません)。

 1が間違いと答えた人はいないと思います。3は後で詳しく書きますが、たとえば2人の人があるリンゴの話をしていて、「そのリンゴが」という場合にはtheを使うと習ったと思います。これも正しい文です。

 最後に2ですが、これを間違いと答えた方に質問です。友だちにりんごジュースをグラスに入れて出したら「これ何のジュース?」と聞かれました。「これはリンゴだよ」を英語で何と言いますか?

 This is an apple.は「1つのリンゴ」という意味しかないので、聞かれていることへの答にはなりません。この状況で正しいのはThis is apple.です。ではそろそろ、冠詞を付けない場合と不定冠詞a(an)を付ける場合との違いから見ていきましょう。

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◇無冠詞はどんな時に使う?

 今のリンゴジュースの例に戻ると、単数なのに冠詞が付いていません。それは、ここで意識しているのが丸い、赤いなどといった形や輪郭を持った1個のリンゴではなく、リンゴの味やにおいを持ったものの集合、ちょっと難しい言い方をするとリンゴというものの属性(この言葉は覚えなくてもいいです)だからです。このような場合には、名詞が単数でも冠詞が付きません。

 同じ場合の例をもう1つあげましょう。料理に何か柑橘類をしぼった香りがするので、「これ、レモンがかかっている?」と聞いたら、実はライムでした。その時に英語で答えるなら

 This is lime, not lemon.
  レモンではなく、ライムです。

 これも、形のある1つのレモンやライムを見ているわけではないので、a lime、a lemonとは言えません。

 このような場合とは別に名詞に冠詞が付かないのは、簡単に言えば複数形でtheを付ける状況ではない場合です。theについては後で説明しますので、しばらくお待ちください。

◇不定冠詞a(an)の考え方

 学校の英語の授業で、「数えられる名詞(可算名詞)が単数の時にはa(an)をつけるが、数えられない名詞(不可算名詞)にはa(an)をつけない」と習ったと思います。ところがこのルールは、先ほどのリンゴジュースやレモンとライムの例を見ただけでも、早くも崩れています。どうしてでしょうか?

 それは、名詞が「数えられる」「数えられない」の2つのグループに分けられるわけではないからです。ほとんどの名詞は、形や輪郭のあるものとしても、漠然とした属性としても使われます(appleの例をもう一度思い出してください)。つまり「a(an)が付く単語、付かない単語」という区別ではなく「単語にa(an)が付く場合、付かない場合」で考えないと、a(an)の使い方を理解することはできません。

 では、appleと違う種類の名詞も見てみます。kindnessは「親切」という抽象的な概念を表す名詞(抽象名詞)ですが、次の2つの文を比べてみてください。

 Wherever I went in Tokyo, I was treated with kindness.
  東京ではどこに行っても親切なもてなしを受けた。

 He did me a kindness when he got me a job.
  親切なことに彼は私に仕事を探してくれた。

 2つ目のkindnessに不定冠詞aが付くのは、仕事を探してくれたという「1つの親切な行為」が頭の中にあるためです。「抽象名詞→数えられない→a(an)は付かない」と考えてはいけないことがわかります。

 名詞の種類に関わらず、「数えられる名詞かどうか」に従ってa(an)が付く・付かないが決まるのではなく、単語を使う人がその対象をどうとらえているかが「an appleかappleか」「kindnessかa kindnessか」の違いによって表されるということですが、ここがわかっていただけましたか?

 また、不定冠詞の歴史的な成り立ちを見ると、もともとoneを使っていたのが母音・子音の前ともanに変わり、その後に子音の前だけaになったために、a(an)のベースには「1つ」があります。このことと今までの考え方を頭において、不定冠詞a(an)の基本的な使い方を例文と一緒に見てください。主なものは次の2つです。

1.具体的なある「1人」「1つ」の人・物を指す
 There is a vase on the table.
  テーブルの上に花びんがある。(→そこにある具体的な花びんのこと)
2.不定のある「1人」「1つ」(「〜というもの」の気持ち)を指す
 This is a book.
  これは本(というもの)です。

◇theの考え方

 では、定冠詞theはどうでしょうか。よく「すでにわかっている名詞にtheを付ける」という説明がされています。たとえば先ほどの

 There is a vase on the table.

 この場合も、花びんが置かれているテーブルはすでにわかっているからtheという説明ですが、正確に言うと少し説明不足です。

 theを使うのは、「こちらが指しているものが『相手にも』わかっている」場合です。相手と意識を共有している場合ということができますが、共有のしかたには次のようなものがあります。そこで、theを使う主な場合をまとめると、次のようになります。

1.常識的に考えて対象がわかる(共有できる)場合
 The White House is the residence of the President.
  ホワイトハウスは大統領の住居です。
2.文脈から対象を共有できる場合
 ・前に出た名詞を指す場合
  (I have a book.があって)  The book always makes me happy.
   その本を読むと私はいつも楽しくなる。
 ・前に出た名詞に関連するものを指す場合
  We are going to have a party. I am busy writing the invitation.
   パーティーを開くので、招待状を書くのに忙しい。
3.その場の状況から対象を共有できる場合
 It is very cold here. May I shut the window?
  ここはとても寒いので窓を閉めてもいいですか?
4.共有する対象をその後で示す場合
 The man standing there is my father.
  あそこに立っている男性は父です。

 1の「常識的に」という場合によく出てくる例の1つがthe moon(月)です。moonには木星や土星などの周りをまわる「衛星」という意味もあるため、a moonと言うとそれらたくさん(複数)の衛星を考えた中の1つになり、「月」と言いたい場合に使うことはできません。誰もが「あの月」と考える対象なのでthe moonになります。

 冠詞は日本語にそれに相当するものがないこともあって、なかなか自信を持って使いこなせないものですが、英米人は冠詞の使い間違いにとても違和感を覚えます。特に書く英語では、冠詞の間違いがあるとはっきりと目に見えてしまうので、正しく使えるようにしておくことは大切です。

 今回は、不定冠詞a(an)と定冠詞the、さらに冠詞を付けない場合の区別について、基本的な考え方を書きました。特にa(an)の有無について、名詞が「数えられる」「数えられない」ということによる区別から発想を変えることができれば、冠詞の使い分けの悩みの大きな部分から解放されます。ぜひしっかり理解して使えるようになってください。

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