女性ファッション誌に出てくる英語表現 (その1)

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 女性の読者の方で、ふだんからファッション誌をお読みの方ならお気づきでしょう。なんと外来語が多いことでしょうか…! 「洋服」は西洋から来たものなので、アイテム名がカタカナになってしまうことは仕方ありません。しかし、それ以上に誌面に蔓延するカタカナ語の数々。2記事に分けてそれらのファッション誌上の英語をご紹介してまいります。

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「エフォートレス」effortless

 ずばり「抜け感」のことです。日本語でも「抜け感」というのが具体的に何を指しているのかうまく伝えづらいのですが、たとえば女優の中村アンさんは、ファッションも、また彼女の存在じたいもまさに「抜け感」のお手本として多くのメディアが取り上げています。清潔感があり、自然体で、でも流行はさりげなく押さえているということです。ファッションに興味がなく、ただ自然体でいる無頓着さとはまた別物です。effortlessは字面どおりの解釈でかまいません。「努力しなくても」ということになります。(くれぐれも「努力不足」ではありません…!)そのまま英語で「エフォートレス」とカタカタ表記しているファッション誌も少なくありませんね。
おしゃれに見せようとギラギラ頑張っているわけでなく、それでも「なんだかおしゃれ」に見えるあの感じがメディアで言うところの「抜け感」なのですが、たとえばPコートやシャツの襟を立てたり、ジーンズの裾を折り曲げたり、ちょっとした気を遣うことがその代表格です。それと同時に、流行に合わせてジーンズは実は毎年更新していたり、シーズンごとにアイシャドーを変えたり、小さなところで流行や季節感をしっかり意識しているわけですね。ちなみに「こなれ感」なんて言われ方も昔からありますが、「抜け感」のほうが今どきの用語ですね。

「マストバイ」a must-buy

 これは完全に商策で生まれた語ですから、ファッション誌のプッシュする商品をそのまま「自分も買わなきゃ!」と理解するのは早計です。冊子の後ろに”通販コーナー”までわざわざ綴じ込んである場合は、特に戦略的なにおいがプンプンしますので危険です…! ファッション誌とアパレルメーカーが親密なタッグで「今シーズンはこれを流行らせよう!これを売ろう!」と読者を取り込んでいるんです。ぜひ冷静になって、「マストバイ」の言葉に踊らされないでくださいね。買わなくても、おしゃれに見せる方法はいくらでもあります。

「プチプラ」petit price

 これはフランス語のpetit「プチ」と英語price「値段」の合成語です。「安物」とはっきり言ってしまえばツライものがありますが、「プチプラ」と言い換えられることでなんだか違って聞こえませんか? 言葉のマジックですね。
 もちろん、人によっていくらまでを被服費にかけられるかは異なりますので、「ここからここまでがプチプラだ」と明確に線引きをすることはできません。しかし、明らかにファストファッションのブランドは「プチプラ」に含まれます。GUやH&Mに代表されるブランド群がいわゆるファストファッションですが、大量生産・大量消費の収益構造にのっとってうまく成果を上げています。

「ワンマイル服」one-mile fashion

 普段着だけれども、”家着”(いえぎ)ではなく、あくまで”外に出るときの服”です。ちょっと近くのコンビニまで行くとき、あるいは子供の幼稚園の送り迎えに、という毎日の生活に密着したファッションです。日本はmile「マイル」ではなくkm「キロメーター」の単位を使うのでピンと来ないかもしれませんね。1マイル=1.6kmですから、この1.6km圏内の暮らし用に身につける服ということです。電車やバスにわざわざ乗らず、徒歩や自転車で動ける範囲を指すのが一般的です。
 機能性だけを考えれば、ジャージの上下でも十分かもしれません。それでも、同じジャージでもおしゃれに見せたいのなら、女性ならたとえば「Stella MaCartney by adidas」で購入したり、男性ならパーカーは「Supreme」で購入したり、こだわろうと思えばこだわれるものです。ただし、あくまでも購入価格ではなく、全身コーディネートとして気を遣っているかどうかが「ワンマイル服」を語るのに欠かせないエッセンスです。
 「ワンマイル服」を広義で受け取れば、ただの普段着です。しかし、ファッション誌で「ワンマイル服」と言うときには「おしゃれな普段着」と一気に狭義になります。パジャマ同然の服で出歩くのではなく、それなりの服に身を包んで近所を歩いてみましょう、というファッション業界からの提案です。

「オケージョン」occasion

 女性ファッション誌での使われ方は、「オケージョン服」なんて言い回しが圧倒的に多いです。たとえば食事会用のワンピース、ほかに子供の入学式や卒業式のスーツ、結婚披露宴へ着ていくドレスなど、主に晴れの舞台向けのファッションを指します。ブラックフォーマル(喪服)も、言ってみれば「オケージョン服」の一部です。
もともと英語の「occasion」という単語は、直訳すれば「(特定のことが)起きるとき、場合、機会、行事」です。なるほど、そうですね。わざわざそのイベントのために、背筋をシャンと伸ばして着る服が「オケージョン服」というのも納得です。

「リアルクローズ」real clothing

 以外にみなさん、clothing の本来義をご存じないようです。身にまとうすべてのものを指しますので、われわれが日常で身につけるものは clothing のほんの一部にしか過ぎません。和装・洋装を問わず、服はすべて clothing です。よってイブニングパーティ用のカクテルドレスも、軍隊の制服も、外科医の手術着も、宇宙飛行士の服もすべて clothing とお考えください。
 ファッション誌で言うところの「リアルクローズ」というのは、ふだんの生活場面で身につけるもの一般を指しますから、パーティードレスや喪服を含んでいません。(つまり、先述した「オケージョン服」は含まれません。)また、デザインの個性が強すぎて実際に着ていくにははばかられるような服も含まれていません。仮に全身が蛍光ピンクのエナメルの服が、パリコレで発表されたとしましょう。これは、ほとんどの人にとって「リアルクローズ」ではありません。しかし一方で、黒のストイックなワンピースが同時にパリコレで発表されたとします。これは、高級ブランドの値付けに違和感を覚えないのであれば十分に「リアルクローズ」の範囲内ということになります。実際に生活の一部に溶け込めそうな服だからです。このように、日本の女性ファッション誌においては「実際に自分が着用するに耐えうるデザインと質か」が論点になります。この条件をクリアしたら「リアルクローズ」の仲間入りです。

「エコ・ファー」eco-friendly fur

ここ2年ほどで見聞きするようになった語ですが、これはずばり「にせ物の毛(ファー)」ということになります。これを「フェイクファー」と言ってしまっては、動物愛護の観点であえて本物のファーを身につけないポリシーの人たちが怒ってしまいます。
 eco-friendly とは生態系にやさしいということです、あなたのお財布にやさしいという意味ではありません。あくまでもその点をお間違えなく。

男性の読者にとっては、あまりふだんから見かけることのない用語だったかもしれませんね。四季のある日本は、ファッション商戦としても仕掛けやすいお国柄であると言えます。めくるめく変わる流行の波に乗ってみるのもよし、ひたすら意固地に自分路線の追求もよし、ぜひご自身にとって心地よいファッションライフを目指してくださいね。続きは同タイトルの「その2」でご覧ください。

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