アレルギー薬「エピペン」の大幅値上げがアメリカで問題に

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「エピペン(EpiPen)」という急性アレルギー反応の補助治療剤の価格を大幅に引き上げ続ける米製薬会社に批判が上がっています。英語を学びながら、何が起こっているのか探ってみましょう。
(英文は、”Massive price increases on EpiPens raise alarm”, USA Today 2016/8/25)

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Two U.S. senators are raising concerns about massive price increases on a drug used under emergency conditions for food allergy reactions to see if they are justified.
 アメリカの2人の上院議員が、食物アレルギー反応の応急措置に使われる薬品の大幅値上げについて懸念があるとして、値上げの正当性を追及している。

(単語チェック)
senators:上院議員《複数形》
massive:大幅な
allergy:アレルギー
 発音に注意しましょう。日本語の「アレルギー」ではなく「アラジ−」という感じでアクセントは最初に置かれます。

☆ 57ドル→10年間で500ドルに!

Sen. Chuck Grassley, R-Iowa, has written the manufacturer, Mylan, asking for the reasons behind the price boosts for EpiPen, that has seen its price rise from $57 in 2007 to about $500 today. 
 アイオワ州選出のチャック・グラスリー議員(共和党)は製造者のマイランに対し、「エピペン」の大幅な値上げの理由を明らかにするように求める書簡を送った。この薬の価格は2007年には57ドルだったが、現在では約500ドルになっている。

(単語チェック)
Sen.:senator(上院議員)の略
R-Iowa:アイオワ州選出の共和党議員
 RはRepublican Party(アメリカの共和党)
 民主党(Democratic Party)の場合はDの後に州名を書きます。
Mylan:マイラン(エピペンの製造会社)
price boosts:価格高騰
 電気のブースター(booster=昇圧器)のboostです。

エピペンは「アナフィラキシー」と呼ばれる急性アレルギー反応の応急処置に使われる注射薬で、マイランが製造をほぼ独占しています。

民主党のエイミー・クロウブシャー議員(ミネソタ州選出なので、先ほどの書き方だとD-Minn.となります)も連邦取引委員会(Federal Trade Commission。略称FTC)に調査を求めています。

Since the drug is used for emergency treatment, it's not only patients who buy it, but public schools and other government institutions, Grassley says.
 エピペンは応急措置に使われるため、これを購入するのは患者だけでなく、公立学校や政府機関も含まれるとグラスリー議員は指摘している。

(単語チェック)
treatment:治療
patients:患者《複数形》
 patientは「忍耐強い」という形容詞としても使われますね。

エピペンは自己注射薬で、1年ごとに買い替える必要があり、価格の上昇によって購入を続けられない患者が増えています。また、エピペンを学校に常備する負担だけでなく、患者が加入する健康保険プログラムへの出資額が増えることによっても、政府の負担が拡大するという問題があります。

“Many of the children who are prescribed EpiPens are covered by Medicaid and therefore the taxpayers are picking up the tab for this medication,” Grassley wrote.
 グラスリー議員はまた「エピペンを処方される子供の中には、(公的保険である)メディケイドが適用される者も多い。つまりこの薬剤の価格は納税者も負担しているということだ」とも述べた。

(単語チェック)
prescribed:処方される《過去分詞》
covered:(保険が)適用される
Medicaid:メディケイド
 アメリカの公的医療保険制度の1つ
picking up the tab:勘定を払う《現在分詞》
 tabはアメリカの口語で、レストランなどの勘定書きのことです。「勘定書きを取り上げる」のは支払うためですね。
medication:薬剤、治療

アメリカの医療制度は日本と違い、個人が民間企業の医療保険に加入するのが基本ですが、この保険料がとても高額のため加入できない人がたくさんいます。そうした低所得者や身体障害者のために用意されたのがメディケイドで、費用は、州と連邦政府が共同負担しています。

余談ですが、昨年国会でもめた末日本が参加を決めたTPP(環太平洋経済連携協定)は、日本の医療保険制度に大きな影響を与えるのではないかと言われています。

日本では、公的医療保険に全国民が強制的に加入するように定められていますが、アメリカの保険会社は、TPPが日本の医療への市場原理の導入の道を開くことを望んでいます。それは日本の医療費の高騰につながる恐れがありますが、国会では農産物の問題に比べてこの議論は少なかったように思います。

☆ マイランの対応

Mylan issued a statement that did not specifically defend the price increases, but noted many consumers may be exposed to them now that they have been switched to a high-deductible policies. 
 マイランが公表した声明は、値上げ自体について具体的に弁明するものではなかった。しかし同社は、今ではエピペンが低所得者向けの保険契約も適用対象となったため、多くの患者にとって手に入りやすくなっていると反論した。

(単語チェック)
issued:公表する、発表する《過去形》
specifically:具体的に
exposed to:〜にさらされて
 ここではエピペンが手に入りやすくなったというマイランの弁明です。
high-deductible:(保険の)控除免責金額が大きい
 保険会社の免責金額が大きいため、治療を受けた時の患者の自己負担額は大きくなりますが、その代わり月額の保険料が低く抑えられ、低所得者でも加入はしやすい保険をhigh-deductibleと呼んでいます。
policies:保険契約《複数形》
 このpolicyは「政策」ではなくinsurance policyのことです。ぜひ覚えてください。

マイランはその後さらに、自己負担額の高い患者を支援する既存プログラムを拡大する計画と、新たに約半額のジェネリック(後発医薬品)版を発売することを発表しました。

しかし、批判は収まらないようです。マイランは市場に長く流通していたエピペンを2007年に買収したため、研究開発費を回収する必要がないという指摘もされています。つまり製造費が一定であるのに継続的な値上げはおかしいということです。

アメリカでは子供の100人に6人は食物アレルギーがあり、そのうち20%近くは学校で食べたものに反応して治療が必要になったというデータがあります。

このため、独占的な地位を利用して弱い子供を食い物にしているという不満は強く、マイランの対応は今後も注目を集めるでしょう。

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