タイ人の英語って? バンコクで調査

体験談
スポンサーリンク

タイの首都バンコク。東京からは直行便で7時間。最近ではエアアジアXなどのLCCによる格安航空券で往復2万円台から気軽に行くことができる観光地です。アジア圏内だけでなく、アメリカやヨーロッパなどからの観光客も多く訪れる、まさにインタ-ナショナルな都市。そこで4泊5日のバンコク旅行に出かけた筆者が、「タイ人の英語」をレポートいたします!

えっ?さっきの話は英語で言っていたの?

これは衝撃でした。バンコクの空港内では英語で問題なく過ごしていたのですが、空港からホテルへ向かうタクシーでは、運転手さんとの会話がどうにもこうにも進まないのです。運転手さんが話していたのは英語だったと気づくまで2分ほどかかりました(ゴメンナサイ)。
まずタクシーに乗り込み、こちらからハローと言って行き先のホテルを告げます。「オーイ」と返事があり、そこまではよかったのですが、この後から何を言われているのかさっぱりでした。しかし会話のところどころに聞き慣れた「one hundred」や「twenty」なんて言葉が混じっていることに気づき、「そうか!この運転手さんは英語で話しているんだ!」とわかったのです。「サッチャー!」と何度か叫ばれていたのは「ああ、surchargeか!」と。そういえば高速道路に乗るから追加代金がかかる、というのは話の流れとして妥当です。

先刻の「twenty」も同じように後ろアクセントで「トゥエンティー」と言っていたのですが、このケースを応用すると一瞬で理解の範囲が広がっていくのを感じました。(考えてみれば、はじめの「OK」も「オケーイ」でしたね。)ここでタイ英語の聞き取りスイッチがonになりました。いったんスイッチがonになると、「cola」が「コーラー」になったり「ginger」が「ジンャー」になるぐらいの変化は、聞き返さなくても確実についていけるようになります。

濁音をはっきり濁音化しないのはキツイ

上記のアクセントについてはわりと早い段階でなじめるものですが、最後まで難題として残ったのが、タイ人は「d」音を「t」音的に発音するなどで濁音がきちんと聞き取りにくいことです。タクシー内で運転手さんが「パットゥン、パットゥン」と言っていたのは、「Pardon?」だったわけです。まして後ろを上げ調子で言ってくれないものですから、理解できるまで非常に時間がかかりました。結局「one more time ヤ~?」と言われて、「ああ、あれは聞き返し表現だったのか」と気づいた次第でした。

音程変化が、とってもタイ語っぽい

さてアジア圏の英語にはさまざまなものがあり、シンガポールのシングリッシュに代表されるようにいずれの国の英語にも訛りはあるものですが、タイはタイでとてもかわいらしい響きを持っています。
タイ語の独特のトーンが彼らの話す英語にも反映されているのです。英語はシンプルで「強く読む/弱く読む」、ほかにはせいぜい「語尾を上げる/下げる」の変化で成り立っています。しかしタイ語には声調(イントネーション)が5種類あり、声調が異なると語の意味も異なります。同じように声調のある中国語の学習者なら、体感的にわかっていただけるでしょう。強い/弱いだけではなく、うまく「音の高さ」をコントロールしないといけません。ゆえに、タイ語も中国語もメロディアスな言語なのです。

タイ語は語尾が特にユニークで、「ローイ」「ソーイ」などの長い音を上げ調子で言うことが多いので、英語もこの影響を受けて魔法のようにキュートな仕上がりとなるのです。若いタイ人の女の子が、タイ語風の”語末が長めの発音”で英語で話しているのを聞くたびに、なんだかこちらもじわ~っとハッピーになるのです。本当にかわいらしいのです!

否定形が超シンプル化されている

英語では否定形はnotの一語に代表されますが、実際の運用においては「don’t, doesn’t, didn’t, isn’t, aren’t, haven’t…」などさまざまなバリエーションを要します。これを、ほとんどのタイ人は強引にnotだけで乗り切ろうとする傾向があります。「Not spicy?」「Not this!」などの究極の形ではコミュニケーションが可能ですが、きちんと文として伝えるべき場面でも「I not go there.」のように言う人も少なくありません。もちろん文法がしっかりしている人もいますから、全員ではありませんが。

過去形を言えない

こちらは完全に母国語の影響です。タイ語には過去形の動詞活用がないそうです。ゆえに、本来ならば「I went there yesterday.」と言うべきところを「I go there yesterday.」と現在形のgoを使って言うそうです。しかし明らかに過去とわかるyesterdayが入っているために、聞き手は確実に過去の話だと理解できるのです。
同様に未来表現においても、タイ人は「I will go there tomorrow.」ではなく「I go there tomorrow.」と言うそうですが、こちらも明らかに未来とわかるtomorrowのおかげで聞き手はそれなりに理解できるそうです。こうなってくるとhave + 過去分詞の「現在完了」を使いこなせるようになることは、タイ人にとって非常に高いハードルであることは間違いありません。

流暢さはどうなの?

ここで「流暢さ」の定義ですが、正しい文章を次から次へと話すことではありません。あくまで筆者視点で「受け応えの反応の自然さ」を指します。さすがにホテルのスタッフや大手デパートの店員は、きちんとした正しい文章で返ってきますし、一部の人はタイ語訛りの発音であっても多くの人はキレイな英語を話します。テンポも大変自然です。

では街中ではどうかと言うと、単語のぶつ切りで言葉をつなぐようなコミュニケーションレベルであれば、街ゆく人たちに道を尋ねてもきちんと流暢に返ってきます。
日本人のように、「ああ、ええと」で10秒も15秒もかかってから文法的に正しい第一発話が出てくるのではなく、「Go! Left!」のように短く、それでもきちんと自然なタイミングで返ってくるのです。道がわからないときは「Go straight and turn left.」と正しい言い方で返してもらう必要はまったくないので、「Go! Left!」で十分ですね。英語ネイティブからすると、日本よりタイのほうが印象がよいのかもしれません。

英語で安全に過ごすには小ギレイな場所で?

結論としては、おすすめしません。ローカルのごちゃごちゃしたところであっても、外国人が集まるところであれば最低限の用事を英語で済ませることは十分に可能です。例えば、バックパッカーの聖地と言われるカオサン通りなどはとても洗練されたところとは言えませんが、あまりの外国人観光客の多さに、ローカルの人たちも英語習得を積極的におこなっているのです。

英語で安全に乗り切るために、例えば現地の安い市場で買わずにデパート内高級スーパーで買うなど、もったいない選択です。その浮いたお金で、美味しいタイ料理が1食分堪能できるのです。ほかに、コミュニケーション・ミスを恐れて、タイならではのトゥク・トゥク(廉価の3輪タクシー)に乗らずに普通のタクシーに乗るのも、貴重な経験を逃すもったいない選択だと個人的には思います。

街の外れの市場でも、単語なら十分にコミュニケーション可能です。本来の正しい英語なら、「Could you give me some discount?」と値切るわけですが、これではお店のスタッフさんが「ん?何か早口で言われているぞ」と縮こまってしまい、ものすごく構えられてしまいます。短く大きな声ではっきりと「Discount?」と言えば100%通じます。
横柄に言えば、場面別に英単語さえしっかり準備していけば、スラスラと文章の発話ができなくてもたいていの場所ではやっていけます。タイ人の受け応えもまた同じようなレベルで返ってくると思っていれば、こちらも気軽に話しかけられるのではないでしょうか。

タイ人の英語力、オフィシャル見解の場合

すでに2011年より、タイの小学校では英語が必修科目となっています。日本より早い着手でありながら、残念なことにある調査機関での英語力のランク付けにおいては、タイは80か国中で53位。ちなみに日本は37位です。なお1位はオランダで、最下位80位はラオスです。(データ出典:EFエデュケーション・ファースト 英語能力指数調査、第7回調査結果より)
このランク付けによれば、タイは日本よりも下位です。その差が激しくあるかといえば運用力としては五十歩百歩のようですが、英語教員の質としては日本のほうが上であるようです。例えばタイで英語教員になるのに、英検準2級程度の英語力でも職にありつける場合もよくあるとの現地人情報です。それを嫌悪する高学歴夫婦は、自分の子供たちをインターナショナルスクールに通わせているようです。いずれにしても日本と同様に、タイ国民も全体としては「英語ができない」お国柄と言えます。

バンコク勤務の日本人サラリーマンは苦労していた!

一般的に日本人の会社員がアジア圏へ単身赴任となると、ゴージャスなマンションライフ、運転手&お手伝いさんつき、3食が外食でも安いのでまったく問題なし!、というまさに「うらやましい!」のオンパレードに帰結します。確かに、大企業ならそれをかなえてあげられるのでしょう。生活スペックとしては上々流々です。

しかし、筆者の知人は1年前に東京からバンコクへ転勤になり、言葉と文化の面での苦労が想像を絶するほど大きかったと言っています。ハード面では十分に会社の恩恵にあずかっていながらも、ソフト面がどうにもままならないと嘆いていました。日系商社勤務の彼は、いわゆるエリートであり、またそのタイ支社で働くタイ人同僚もまたエリートです。社内での英語は問題なく通じるだろうと思っていたそうですが、やはり社内コミュニケーションにおいても日常的に困難を覚えるようなのです。

タイの国産エリートは、英語力は千差万別のようで、学校教育だけではとても1回で聞き取れるようなキレイな英語を話さないというのです。ネイティブの家庭教師をつけたり、単発で海外のサマースクールに行ったり、また極端な場合はインターナショナルスクール卒業であったり、など特別な英語学習環境を得られた人でないと、タイ人独特の訛りは抜けないようです。
さらに英文法がしっかりしている人とそうでない人がいるので、同じ説明で伝えても理解度が全然違うそうです。その場合はやさしい英語で言い直すなどの手間もかかるそうです。日本と同じように、「英語以外は完璧!」なグローバル視点でやや残念なエリートワーカーたちがタイにも多いようです。

さて、簡易レポートでしたがいかがでしょうか? タイで勤務する場合はなかなか苦労しそうですが、旅行で訪れるぶんにはまず安心してよいと思います。「ほほえみの国・タイ」でぜひ美味しい料理と、キュートなタイ人英語を堪能してきてくださいね。

タイトルとURLをコピーしました