Welcome to Tokyo! 東京都は「おもてなし」を頑張っています

上達法
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こんにちは。本日はインターナショナルなボランティア活動について触れてみたいと思います。
みなさん、「おもてなし」という語がかつてないほど頻繁に使用されているのを、どんな気持ちで眺めていますか? そうです、2013年の東京オリンピック誘致で滝川クリステルさんがIOCに向けて「お・も・て・な・し」とプレゼンしたときのあの言葉ですよね。「おもてなし」は同年の新語・流行語大賞にも選ばれました。
さて、無事にオリンピック誘致が決まり、2020年8月の開催に向けていよいよカウントダウンが始まったわけですが、実際にわれわれ一般人の生活と「おもてなし」が具体的になにかしらの関わりがあるのか? と問われると、なんだか疑問ですよね。本日は東京中心のレポートとなりますが、東京都が考える「おもてなし」精神について述べてみたいと思います。

広義にはインフラも笑顔もすべて含めて「おもてなし」

「おもてなし」とは、なにも外国のお客様を迎えるためだけの言葉ではありません。それこそ親戚のおじさんを正月に招いて食事を楽しんで行ってもらうのも「おもてなし」ですし、ふだんお世話になっている取引先の人が自社に来たときにサっとお茶を出してあげるのも「おもてなし」です。相手にとって不自由のないよう気を配ること全般を指すのが本来です。ところが、近年はもっぱらインバウンド業界を中心に「外国からのお客様を懇切丁寧にもてなす」という狭義で使われることが多いようです。

レストランや宿泊施設などの観光関連業では特に、業界側からのわかりやすい反応があり、なににつけても外国語と日本語の併記がもはや当たり前となりました。宗教上の食事制限がある人のためにハラールのお店ができ始めたり、デパートだけでなくマツモトキヨシなどの店舗においてもTAX FREEのカウンターが設置されるなど、特に商業面での進化はめざましいですね。われわれ日本人から見ても、街全体が「外国からのお客様をお迎えしよう!」というムードに包まれているのがわかります。

さて、実は見えないところにも「おもてなし」はきちんと行き届いているのです。TOKYO FREE WIFIはほとんどの地域をカバーできるように工事が進んでいますし、駅舎は東京メトロを中心に刷新されていますし、バス会社は中がフラット化している車種に順次変更中など、すべての東京ビジターのためにさまざまな工夫を凝らしています。バリアフリーも一気に加速しています。東京オリンピックを見に来るのは、なにも外国の方ばかりではありません。日本全国津々浦々からやって来るビジターのみなさんにも「東京っていいな」と思ってもらえるように都はプロジェクトを進めています。

オリンピックのボランティアとして活動したい

もちろんイメージどおりの「訪日外国人をもてなす」ための仕事も、東京都はしっかりおこなっています。
まずはオリンピック開催期間中のボランティア活動の運営管理がその筆頭にあります。東京に限らず、オリンピックというものがそもそもボランティアの人たちの助けを前提として開催されるものであり、ボランティアスタッフは選手村や競技会場を中心に活動します。正式には「大会ボランティア」と呼ばれるのですが、これは「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」というところが担っています。
これとは別に、東京都が運営主体となっているのが「都市ボランティア」と呼ばれるもので、空港や主要駅、ほかに競技会場付近で待機し、観光や交通の案内をするのがその活動の中心となります。どちらも、公募ののち書類選考・面接選考を経て活動者を決定していきます。2018年7月に募集要項の詳細が発表されます。

すでに「おもてなし」ボランティア活動をしている人がいるけれど…?

そうですね、東京にお住まいの方は目にしたことがあるかもしれません。「東京都観光ボランティア」という活動で街頭に立っている人たちのことです。彼らはオリンピック開催のゆくえと関係なく、ずっと以前から活動しています。都心部を中心に、おもに外国語での活動をベースとしています。
もともと東京はアジアでも最大の国際都市の1つですから、確かに外国語を使っておもてなしを提供すべきバックグラウンドではありますよね。筆者の知らないうちに、都がしっかりとこの需要をすくっていました。これまであまりメディアで取り上げられることがありませんでしたが、縁の下の力持ちとはまさにこのことで、東京でのステイが少しでも快適になるようにこれまで次の5つのグループに分かれて活動がなされてきました。

1.街なか観光案内
外国人旅行者が多く訪れる地域の街なかで、旅行者に対して観光案内など各種案内を提供する。

2.都庁案内ガイドサービス
都庁を訪れた外国人旅行者に対し、外国語で都庁内を案内。

3.展望室案内ガイドサービス
都庁展望室を訪れた外国人旅行者に対し、外国語で展望室からの景色を案内する。

4.派遣ボランティア
国または地方公共団体などが実施するイベント・国際会議などで、インフォメーション活動などを実施する。

5.観光ガイドサービス
外国人旅行者からのニーズが高い観光ルート(13ルート)において外国人旅行者へのガイドを実施する。

これらは英語/中国語/韓国語を中心に展開される活動ですが、もちろんスペイン語やそのほかの言語も需要が高いため、複数言語でコミュニケーションできる方がボランティア募集時の最終選考に残りやすいという傾向にあります。筆者の知り合いは上記3のカテゴリで活動をしており、元・私立高校の英語教諭です。趣味で始めた韓国語のほうも堪能です。
なお、元・英語参考書編集者である筆者は、上記1のカテゴリにおいて活動を開始したところです(選考に受かったばかりの新人ホヤホヤです)。ボランティア1年目だと、活動実績をしっかり作るため必然的にカテゴリ1に分類されるとのことでした。

上記に応募するには、どのくらいの外国語能力が必要?

ボランティアだからと言って、カタコト外国語では仕事が成立しません。都の募集要項では、英語ならば英検2級程度の基本文法力と会話能力が必要とされます。駅での乗り換え案内や、目的地までの最短ルートの案内など、相手の言葉を聞き取りスムーズに答えることが遂行できればよいので、厳密には資格試験の保持よりも留学やホームステイの経験が重視されます。

帰国子女はもちろん、英検1級や通訳案内士の資格保持者なら、まず選考からもれることはほとんどないでしょう。一番応募が多いのが、英検準1級程度の能力の方だそうです。しかしこれも結果論ということで、書類選考に貼付する写真の印象が快活そうな人物かどうか、海外留学の経験があるかなど、総合的にジャッジされます。
大学での専攻が「観光課」だったり、異文化交流のサークル主催者を経験していたり、思いもよらないところが加点対象になっているかもしれませんよ。語学力だけでなく人物像のほうもしっかり見ての選考だと言われていますが、なにぶん書類選考のみなので基準は限りなくブラックボックスです。毎年9月に500名程度の新規募集があり、選考結果はだいたい2~3か月でわかります。

シンプルな英語でも、言い回しには気をつけよ

この活動はあくまでボランティアということで、心構えを「有給の仕事並みに」しっかりつくることは容易ではありません。交通費が1日1,000円まで支給されますが、あとは自分の時間を無償で提供するわけです。簡単な外国語表現であっても、そこに相手をリスペクトする気持ちさえあればすばらしい仕事ができますし、反対に「こちらはボランティアでやっているんだから…」と上から目線で任務にあたると、外国語にいくら長けていてもそれでは仕事を果たしたことになりません。

禁煙であることをさりげなく忠告するにしても、Don’t ~ を使えば間違いなく相手は気を悪くします。注意の前に I’m sorry, but… や I’m afraid… とひとこと置いたり、Would you please refrain…? という控え目な表現に変えたりするのは、人間としてのセンスです。外国語がペラペラであること以上に、相手の気持ちを気遣いながらコミュニケーションをはかれる能力のほうが現場でははるかに重要視されています。

誰だってできる「おもてなし」

ボランティアスタッフに登録するしないにかかわらず、すべての国民が「おもてなし」の精神をもって日常生活を送ることができたら、オリンピック終了後も日本は観光立国として立派に歩んでいくことができるでしょう。
すれ違う外国人ににらみを効かせたり、差別用語を吐いたりなんて、もってのほかです。一般の人たちのありようそのものが、まさに国のムードと言えます。外国人相手にこびる必要はありませんが、たとえば「英語で話しかけられてもすぐに逃げない」、「笑顔をふだんから心がける」、「ジェスチャーの力を信じてみる」、「(必要そうな場面なら)グループ写真を撮ってあげる」など、この小さな勇気と行動が大きな力となります。EnglistAをご覧のみなさんは語学も堪能でしょうし、それに国際交流にも深く興味がおありかと思いますから、ぜひシャイな日本人をリードしていってほしいなと思います。

筆者は2018年4月から、「おもてなし」ボランティアの1人として活動を開始しました。東京に住み始めて20年、ますます東京が愛おしく、また日々の通訳ガイドの仕事を通じて日本のよさを実感しています。東京にお住まいのみなさんも、そうでないみなさんも、変わりゆく東京をぜひ応援してください。2020年の夏が待ち遠しいですね。東京オリンピックを起爆剤に、日本全体が元気になることを願ってやみません。

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