円安政策の行方~アベノミクスの頼みの綱は大丈夫か?

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 第二次安倍内閣誕生後、思い切った金融緩和の効果で2015年には1ドル=125円台まで円安が進みましたが、その後は円高基調と歩調を合わせた景気の減速で、円安頼みのアベノミクスという実態が明らかになりました。

 政府が効果的な成長戦略を打ち出せない中、日銀はマイナス金利政策に踏み込みました。英語を学びながら海外投資家の見方を読んで見ましょう。(英文は、”Why you can’t keep the yen down “ BBC News 2016/4/11付)

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☆景気回復に日銀の打つ手なし

Whichever way you look at it, the Bank of Japan has used pretty much everything it has to try to jumpstart the economy.
 どこから見ても、日銀は景気回復のために取りうる手段をほぼ使い果たしてしまっている。

・jumpstart:活性化させる、活発にする

 安倍内閣になって大きく変わったのは、円安、株高、(少なくとも大企業での)賃金の上昇といったことでした。この勢いで消費の拡大、景気の上昇を目指しましたが、経済全体の動向を示すGDPの伸びが低迷したことで、株高も期待先行の結果に過ぎなかったという見方が広がりました。そこに海外要因もあて年初から日経平均の急落と円の急上昇という形で、安倍首相と黒田・日銀総裁の思惑とは逆回転になり始めました。

The Bank of Japan wants the yen to weaken, so that Japanese exporters – car-makers, motorcycle companies and electronics firms – can sell their goods overseas more cheaply – which would in turn help boost businesses’ profits.
 日銀は円安を望んでいる。円安になれば日本の自動車、オートバイ、電機といった業界が海外市場で値下げができ、結果的に企業収益が増加するためだ。

・in turn:次に
・boost:~を増加させる、~を上昇させる

 安く売って(sell their goods overseas more cheaply)結果的に利益が増える(in turn help boost businesses’ profits)というのは、安ければたくさん売れるということもありますが、ドルで得た利益が円安になればさらに増える(たとえば1万ドルの利益は1ドル=110円なら110万円ですが1ドル=120円になれば120万円)ためです。

☆マイナス金利でも円高が止まらない

 ところが、現実はそうはなりませんでした。年初からの急激な円高や景況感の悪化を見て日銀がマイナス金利政策を取ったのに、状況は変わらなかったのです。

But even a dramatic move like pushing interest rates into negative territory hasn’t worked. The theory is that if interest rates are low there’s less incentive to hold on to the currency. But that plan has backfired.
 しかし、金利をマイナスの水準まで押し下げるといった思い切った政策でさえ成功しなかった。理屈では、金利が低くなればその通貨を持ち続けようとは思わなくなる(ので通貨が売られる)。しかしそれは期待はずれに終わった。

・negative territory:マイナスの領域
  マイナス金利を指しています。
・work:機能する
・incentive:動機、理由
・hold on to:〜を持ち続ける
・backfire:期待外れに終わる、裏目に出る
 (例)My plan backfired on me.
   私の計画は裏目に出た。

☆日銀のオプションは?

 では、日銀は今後何ができるのでしょうか?黒田総裁が「もっと金融緩和をする用意がある」と言っている通り、マイナス金利をさらに下げるというのが1つです。しかし

That would almost certainly be met with even more incredulity than the very first move into below zero interest rates earlier this year.
 もしそうしたら、今年に入って初めてマイナス金利を実施した時以上に不信の目で受け止められるだろう。

・incredulity:不信
  incredible(信じられない)と似たスペルですね。これに含まれる”cred”に「信じる」という意味があります。credit(信用)もそうです。
・met with:(好評・不評など)をもって迎えられる
 (例)The decision was met with criticism.
   その決定は批判を受けた。

 もう1つの手は為替市場で円を売る「介入」(intervention)ですが、これにも問題があります。

If it does indeed intervene, it risks being labelled a currency manipulator at a time when China is under fire for doing just that.
 もし本当に介入したら、中国が現在批判されているのと同様な、為替操作のレッテルを貼られるリスクを負うことになる。

・intervene:介入する
  interventionの動詞形です。
・risk:リスクを負う
  名詞「リスク」と同じ形で動詞にも使います。
・manipulator:操作する人、不正な処理をする人
  動詞はmanipulate(操作する)。
・under fire:攻撃(非難・批判)されて、やり玉に上げられて

☆「ヘリコプターマネー」

 アベノミクスでは当初、①大規模な金融緩和、②拡張的な財政政策、③民間投資を呼び起こす成長戦略、という「3本の矢」を掲げていました。このうち1番目を担う日銀の黒田総裁は「何でもする」という構えを崩していません。

 しかし日銀の円安誘導が上手くいかなければ、政府にはもう1つ、helicopter money(ヘリコプターから市中に現金をばらまくように、国民に直接お金を渡すこと)という手もあります。以前行なった「地域振興券」がその1つですが、何とか消費してもらおうという最後の手段です。

The market is losing confidence in the ability of central banks to boost the global economy through monetary easing, The market knows that Japan’s economy has been growing sluggishly despite three years of aggressive BoJ easing.
 市場は中央銀行が金融緩和によって世界景気を上向きにできるとは信用していない。日銀が3年にわたって積極的に緩和したにも関わらず日本経済の成長が緩慢だったことを知っているからだ。

・monetary easing:金融緩和
・sluggishly:不活発に、緩慢に

 ただ、消費による景気拡大と言っても、2020年までに毎年60万人のペースで人口減少が見込まれる日本で本当に景気拡大ができるのだろうかと、海外の投資家は疑問の目を向けています。結局アベノミクスの柱となるのは景気拡大ではなく、輸出の拡大しかないのではないかという見方です。

 今年の後半も円相場が注目を集めると思われる中で、日銀は有効な手を打てるのでしょうか?

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