英語リスニング力を「仕事力」として考察してみる③

リスニング
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こんにちは。前回に引き続いて、仕事の現場で起こったリスニング力不足による困ったエピソードをいくつか共有してまいりたいと思います。

事例(4)her が聞き取りにく~~い

本当のネイティブの発音って、早いだけでなく「音の脱落」が起こりやすいと感じたことはありませんか? 英語圏に留学された読者様ならば聞き取りに不便を感じることはないのでしょうけれど、筆者のように教材のみでリスニング力をなんとかupさせてきた人間にとっては、「音の脱落」は1つの恐怖でもあります。
中~上級者向けの英語リスニング教材には「ディクテーション」(つまり書き取り)という課題が掲載されていることはよくあります。筆者は外部校正者として、教材完成直前の最終チェックを担うアルバイトを時折していますが、そこで毎度「h」の発音には苦労をします。CDから聞こえる英語音声をそのまま英語で書き起こし、答えと照合するという校正業務なんですが、どうしても「her」が聞こえづらいんです。「h」を脱落させて発音しているので「アー」としか聞こえないんです。教材用音声だからせめて「アー」と聞こえるようにかろうじて音が残っているんでしょうけれど、実際のネイティブどうしの会話では完全にオミットされることでしょう。何も聞こえず、ただこの単語がスキップされているように感じるはずです。(これが「his」であれば「h」の脱落があっても「ズ」は聞こえます。よって「her」は聞き取りの難易度が高いというわけです。)
ところで、同じ「h」で始まる単語に「herb」というのがありますよね。日本人は「ハーブ」と発音しますし、一部のネイティブも「ハーブ」と言いますが、多くは「アーブ」と発音することで有名な単語です。これは文頭で「Herbs are …」と来たときも「アーブ」になるので、単語じたいの発音がそうなんです。前の単語の影響によってどうこう、というわけではありません。これは「her」の「h」が聞こえないのとは別問題になります。

事例(5)子供の発音、全然わかりません!

こちらは意外と「あるある」なのかもしれませんけれど、筆者は6~7歳くらいまでの子供の話す英語がどうも半分くらいしか聞き取れません。訪日観光ガイドとして子連れのお客様を終日都内ガイドするときは、どうしても子供の相手をしなくてはいけない場面だってあります。子供のトイレをアシストしたり、怪獣ごっこに付き合ったりするわけですが、途中でゴニョゴニョと何を言っているかわからないときが頻繁に訪れます。
「あれを取って」「抱っこして」「撃つぞ、伏せろ」のような短いセンテンスは問題ありませんが、ちょっと説明が入るときにはこちらとしてはギブアップです。たとえば神社で絵馬に祈願メッセージを書くとき、「お兄ちゃんはね、〇〇で△△で、だから私は××なの。で、こういうお願いごとを書くの」と彼女なりの説明をしてくれるわけですが、困ったことにこれを筆者は聞き取れないんです…。
2歳や3歳の子供であれば、そもそもきちんと言葉になっていないわけで、こちらが聞き取りをできなくてもさほど罪悪感を抱きません。両親も「あぁ、うるさいわねこの子は、放っておいていいわよ」と助け船を出してくれます。
しかし幼稚園児くらいの年齢になれば、はっきりと人格が現れ、自分の言葉できちんと自己主張をしてくるものです。言っていることがわからないからと言って相手をしないでやり過ごしてしまえば、その子を傷つけてしまいますよね。筆者の母親としての経験から、「小さくてもこの子は1人の人間なんだ」ということは明快であり、わかったフリをして適当な対応をとれば、それは相手に透けて見えてしまうものだということもわかります。子供の機嫌が悪くグズリ気味であれば、どんな子でも発話がこもってしまうものなので、聞き取れなくても仕方がないとスパっとあきらめるようにしています。しかしそうでない場合は、やはりきちんとコミュニケーションをとってあげるべきですよね。
どうして子供の発音が聞き取りにくいのか具体的に要因はわからないのですが、親子でお客様をお迎えする仕事であれば必ず解決すべき課題と言えます。解決策としてリスニング教材を買うにしても、子供の発話に特化したものは販売されていませんし、それに教材用に収録された音声というのはそもそも聞き取りやすいですよね。この課題をどう解決していったらよいのか、非常に悩ましいです。

事例(6)基本中の基本、fiftyとfifteenで起こるミス

今度はバスガイドとして団体さんをご案内したときの話です。外国人旅行者の多くは、どういうわけか集合時間にきちんと集まってくれないものです。予約しているレストランやワークショップに遅れないためにも、余裕をもって移動をしたいですよね。そこでガイドは、「10:15」や「at noon sharp」のように、持ち運びサイズのホワイトボードに手書きで集合時刻を書いて皆さんに目視してもらえるようにします。(もちろんサバを読んで、実際の予定の10分ほど前に設定して皆さんに通達していますけれど。)
あるとき、お客様の1人が大遅刻したときがありました。各自10:15にバス座席に戻るように伝えてあったにもかかわらず、10:30になっても10:40になっても姿を現しません。携帯電話もお持ちでないので、さすがに焦りました。先刻ホワイトボードで「10:15」と目に見えるように集合時刻を伝えていたので、集合時刻の勘違いはさすがにないだろう、つまり何かアクシデントに巻き込まれているのだろうと心配しました。でも、ふたを開けてみれば、「10:15」と「10:50」の勘違いでした。
ずいぶんと遅れてひょっこり戻ってきたお客様の説明によれば、ずっと車内で寝ていたのでホワイトボードで集合時刻を示されたことを知らないそう。パっと目を覚ますと皆がこぞってバスから降りるので、あわてて自分も下車し、近くのご婦人に「What time to get back?」ときいたら「Ten fifty」と返ってきたというのが彼の主張です。ご婦人としては「Ten fifteen」ときっちり伝えたつもりだそうですが…。
英語のネイティブどうしではないお客様間のコミュニケーションならば、確かにこういった伝達ミスはありうる話ですよね。多国籍のお客様が乗り合いになっているバスですから、しかたありません。やはりガイド側の責任として、「全員のお客様が話を聞いていることを確認してから」集合時刻の通達をするべきだと痛感しました。

こんなふうに、毎日ではありませんが週に1回くらいのペースで「あぁ困ったなぁ」と思う場面に出くわしています。リスニングとは、コミュニケーションの半分を成している重要な要素です。いくら自分の思うことをペラペラと言えるようになっても、双方向であるべきコミュニケーションの正しいありかたではありません。相手の話をきちんと理解すること、また正しく情報を得ることを「おおまかに」しかできないまま、英語を使った仕事をもろもろ請け負ってしまっていますから、日常的に苦しい場面が出てくることは当然と言えば当然でしょう。お客様どうしの伝達ミスをどうカバーするかも含めて、正しいリスニングというのは本当に大切だと思いました。
これまで「英語ができる=英語が話せる」というイメージのもと、おもにはスピーキング力を伸ばすために努力を重ねてきましたが、ここでいったん立ち止まって、リスニング力upに邁進すべきだと強く感じています。個人の雑感に近い記事となってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

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