実録! 成田空港が台風の影響で大パニック  ~そのとき外国人観光客は【後編】~

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こんにちは。ころすけです。本記事【前編】をお読みいただいた方はありがとうございました。ツアーガイドの仕事をしているときに起きたトラブルについて、掲題のエピソードをご紹介したいと思います。

タクシーがつかまらない

明け方に大型台風が通過したその日、成田空港までの道は、鉄道系は各駅停車も含めてすべて運休。エアポートバスもすべて運休。高速道路も封鎖という条件下で、成田空港まで向かう最後の手段は「下道をタクシーで行く」ということになります。時間がかかっても歩いていくよりはマシだということで、タクシースタンドにはスーツケースを持つ人の長蛇の列が…。
航空会社はこぞって欠航のアナウンスをしないものですから、とにかくフライトは予定どおりだと思い込んでいる旅行者たちが焦った表情で時計とにらめっこしていました(実はこのあと、出発時間直前で欠航が相次ぐわけですが…)。

成田空港への玄関口である上野駅や日暮里駅では、ざっと200人はタクシー待ちの列に並んでいました。UberやJapan Taxiといったスマホの配車アプリも起動じたいはするものの、「タクシーが見つかりません」の表示が繰り返されるばかり。とにかく列を分散させるのに、駅職員が「Go to different stations.」(ほかの駅に行ってください)と言っていました。確かにこれでは待っても待ってもタクシーには乗れませんからね。ふだんはドラマでしか聞かない「Jesus!」という言葉もこの日は何十回も耳に入ってきました。
その場に居合わせた筆者は「Move to a minor station such as Uguisudani for taxi. There should be more cars available.」(鶯谷などのマイナーな駅に行けば車はつかまえやすいはずです)と補足を入れつつ、何組かの旅行者の誘導をしました。筆者のほかにもガイド職の日本人が何人かいたので、ひとまず向かう駅ごとに小さなグループを作り、それぞれ別々の駅へ移動しました。

これが本当のsqueeze!

マイナーな駅(と呼んでは地元の方たちに失礼ですが)へ移動したあとも、やはり30人程度のタクシー待ちの人がすでに並んでいました。とにかく一人でも多く空港へ向かえるよう、割勘の話がまとまった人たちから順にタクシーに押し込みました。ふだんなら後ろのトランクに入れる旅行バッグも膝の上です。トランクは大型スーツケースを1つ入れる程度のキャパシティしかありません。そう、まさに文字どおりの”すし詰め”状態でタクシーは出発したんです。助手席に1人、後部座席に3人。ゆうに体重100kgはありそうな方もいらっしゃり、車内でエコノミークラス症候群になるのでは?と思わずにはいられない場面も…。また車内の最大定員のルールに寛容な運転手さんだと、後ろは最大4人ということで対応してくれました(本来だと後ろは3人です)。

知らない人どうし膝と膝の触れる距離に互いに座り、しかも空港への到着予想時刻は少なくとも2時間以上先ということでしたから、見ているだけでもこの詰め詰め状態には胸が痛みました。外国人は体が縦にも横にも大きいですからね。こんな不快度MAXの移動手段におそらく20,000円ほども乗車料金を支払わなくてはならないのは、不幸でしかありません。乗り込んでもらうときは毎度「Sorry, but squeeze in!」とうながしていました。ふだん都内をガイド中に、ラッシュアワーの地下鉄に外国人旅行者を乗せるときにも「Squeeze! Squeeze!」(詰めて、詰めて)とよく呼びかけるんですが、タクシーを利用するときにこのせりふを使うなんて思いもしませんでいた。

意外と大丈夫だった!? メンタルが強い外国人旅行者たち

こんなときにも白人たちはどういうわけか「ジョークを忘れない」気質であることは、筆者が特筆したい点です。タクシーに乗り込む際は流れ作業で事務的に整理されて、次々と前へ前へといざなわれる自分たちの姿を、「Belt-conveyer sushi!」(回転寿司だ)なんて言って、「I’m tuna!」(俺はマグロだ!)「OK, I’m squid.」(なら俺はイカだ)なんて周りの人を笑わせている姿には、もう脱帽です。
「I was sitting in the first class when arriving Japan, but this is such an opposite experience!」(来るときはファーストクラスに乗ってきたのに、これはまるで逆の体験だ!)なんて言っていた人もいます。もちろんジョークでしたね。真面目に反応する日本人もいて、逆に彼らに笑いとばされていました。「Don’t take it serious.」(真に受けないで)とポンポンと肩を叩かれていました。
なごやかなムードを提供してくれる外国人たちに対して、自分もなにか気のきいたひとことが言えたらいいのにぁと思いつつも、ふだんからユーモアセンスのない筆者には難題です。飛行機に乗り込む前なら「Have a nice flight.」(よい空の旅を)と言うのが一般的ですから、今回はタクシーということで「Have a nice ride.」(よい車の旅を)と言ってみたんですが、はたしてどう感じてくれたのかは謎のままです…。

結局、飛行機は「欠航」だらけ

苦労して成田空港にようやくたどり着いたあと、とんでもないことが待っていたようです。成田から発つフライトはほとんどすべて欠航で、しかも成田に到着する便は予定どおりの運行だったために、次から次へと空港内に人がたまっていく状態になっていたようです。到着したお客も、鉄道やエアポートバスで外に出るすべがありません。唯一、タクシーか自家用車のお迎えで、下道を通って市内に出ることしか選択肢がありませんでした(高速道路は倒木で閉鎖中のため)。
成田を発つ予定だった便は、パイロットやCAはもちろん、チケットカウンターのグランドホステスまで空港に到着できないという理由で欠航になったようです。台風通過のあとなので、天気は快晴。気象条件としては必ず飛行機は飛ばせます。しかし、人員不足で現場がまわらないということですね。
筆者は空港について行かなかったので、あくまで自分のお客さんが随時更新してくれるメッセージとTV報道によって状況を知っただけです。その場に居合わせたらとても大変だったことは容易に想像できます。翌朝まで累計で14,000人もの人で空港がごった返していたそうですから、空港内コンビニはすべて食品系を中心に売切れ続出、レストランも当然注文過多となり売切れ、空港職員から配られる「寝袋+水+クラッカー」だけが頼りだったようです。「陸の孤島」なんてニュースでは揶揄されていましたね。

日本における「言語の壁」

さあ、みなさんも想像に難くないと思いますが、空港に取り残された外国人旅行客の抱えていた不安と不満の正体は、やはり言語の壁でした。情報を適切に得られている場合とそうでない場合とでは、強いられた状況に対しての許容度も変わってきます。空港というインターナショナルな場であるとはいえ、「英語のできる日本人があまりに少ない…!」と彼らには映ったようです。
航空会社カウンターに行けば英語が通じるという希望があったものの、たった20mを進むのでさえ人を押しのけていかねばならない苦労をともなうので、やはり近くにいる日本人に状況を説明してもらうのが一番です。英語のtwitterでは「crawl out」するぐらいの混雑だったとレポートされているわけですから、頼りにするのは航空会社スタッフよりすぐ隣の人というわけです。それでも、話しかけけられたら「No English, sorry.」なんて反応をしてしまう日本人が多く、ましてそれが日本における標準の対応だなんて、彼らには気の毒ですね。日本語で情報のアップデートがおこなわれたすぐ後に、英・韓・中でも同じ情報が得られれば理想なんですが、なんと英語ですら即座に情報が得られなかったそうです。これが多くの外国人旅行者を苦しませていたそうです。
英語のアナウンスがあったときも、音量が小さくて聞き取れなかったという不満が続出したようです。聞き取れなかったために重要な情報を逃し、寝袋にありつけなかった人もいるのが事実です。朝までどうやって過ごしたのか気になるところです。

英語ニュースだとこんなふうに

せっかくEnglistAを訪問してくださったみなさまには、共同通信社の英語レポート(2019/9/14付)から本件にまつわる英語表現をご紹介したいと思います。

・Road to nowhere: Passengers are stranded at Narita Airport in Chiba Prefecture after rail operators suspended their services due to Typhoon Faxai on Monday.
(道は閉ざされた:月曜日、台風15号の影響で鉄道が運休。千葉県の成田空港で客たちが足止め。)
・Nothing matched the drama at Narita after almost all transport to and from the airport stopped, stranding thousands of travelers in the structure overnight.
(このドラマに匹敵するものはほかにないだろう。成田空港に出入りするためのほとんどすべての交通機関は運休となり、空港内で一夜を過ごす客たちであふれかえった。)

さらに、Japan Timesでは悲しいことに次のような記述もありました(2019/9/10付)。

・Typhoon Faxai raises questions about Japan’s train schedule management and the fragility of its infrastructure.
(台風15号は、日本の電車運行のマネジメントとインフラのぜい弱さに疑問を呈した。)
・……(略), exposing the susceptibility of the capital’s infrastructure to natural disasters and holding lessons for Japan on transportation and recovery planning in times of emergencies.
(…、自然災害に対して首都機能がダメージを受けやすいこともはっきりした。また緊急時における交通の問題、それから災害からの復旧についても日本に教訓を与えた。)

確かに、指摘どおりでしょうね。同じように1年前も関西国際空港で台風による客たちの足止めがありましたから。

以上のことから、2019年9月の台風15号はいかにダメージが大きかったか、おわかりいただけたかと思います。「観光立国・日本」を目指して日々邁進するなかで、課題が見えてきましたね。鉄道会社や航空会社などの企業別のスピーディな対応はもちろん、国や都道府県としてのマスな動き、それから市民レベルで一個人としてトラブル解決の一助となる心意気、いずれも必要です。東京オリンピックで来日してくれる外国人のみなさんが、満足して帰ってもらえるといいなと願ってやみません。

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